手塚治虫作品にはなじみがないうえに、このアラバスターは一般的にもあまり知られている作品ではないため、どんなストーリーかは、まったくわからない状態であった。
よって、前知識ゼロで観劇してきた。
\開幕スポット公開/
ミュージカル「#アラバスター」のダイジェスト映像が出来ました🎩https://t.co/TcaOzemZQ1いよいよ東京公演は7月3日 ㊐ まで💨
大阪公演は7月10日 ㊐ 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演致します🙌
皆様のご来場、お待ちしております🎶 pic.twitter.com/Jyjqozw3qU— ミュージカル「アラバスター」 (@mu_alabaster) June 29, 2022
Contents
観劇メモ
会場や観劇をした日など。
演目名
アラバスター
会場
東京芸術劇場プレイハウス
観劇日
2022/7/2(Sat)ソワレ
透明人間「亜美」がヒロイン
幕が開いてしばらくすると、体が半透明になったグロテスクなアラバスター(宮原浩暢)が主役だとわかるが、ヒロインは「透明人間」の亜美(涼風真世)だとわかる。
しかし舞台上には、ヒロインの姿は見えない。
光、そして涼風真世の無垢な声だけが響く。
涼風真世を知らない人がこの作品を見たら、若い女性がこの役を演じていると思うだろう。
それぐらい少女の声としては全く違和感がなかった。
なんの公演だったか忘れたが、カーテンコールの際に涼風真世本人が「私、いろんな声が出せちゃうのよ」と言っていたのを思い出した。
さて、それにしても、透明人間を舞台上で描く?いったいどうやって?
そんな思いで観続けた。
ピンスポットライトが当たっているところは亜美がいるところ、舞台上の役者はそちらのほうを見て語りかける。
亜美が血を流すシーンでは、舞台上に赤いピンスポットライトがいくつもの点を作った。
観客の私は、亜美役の涼風真世は、いつかは舞台上に姿を現すのだろう、と信じて疑っていなかった。
・・・が、しかし、最後まで亜美は光と影と、そして声のみだった。
なんということだろう!
ヒロインが舞台に一切姿を現さないミュージカル。
長いことミュージカルを見続けてきたが、ヒロインが舞台に一切姿を現さないミュージカルなんて、初めて見た!
この演出は斬新的で素晴らしいと思うが、欲を言うと、美しい涼風真世の姿も一目ぐらいはみたかったな、というのが正直なところだった。
もう一人の「亜美」
亜美は透明人間なので、舞台上では光と声で表現されていたが、舞台上にはもう一人の「亜美」がいた。
それは亜美の影である。
この影は、舞台上では黒衣をまとったダンサーが演じた。
最後のカーテンコールで、「あ!」と気づいた。
ずっと女性だと思っていたダンサーは、男性(穴沢裕介)だったのだ。
ミュージカル
『アラバスター』
本日2公演
ご覧いただきまして、
ありがとうございました🌑#亜美の影 pic.twitter.com/ay8xW9JISg— 穴沢 裕介 (@NextYukke0910) June 30, 2022
素朴な疑問。
彼は始終、目に黒いアイマスクをして優美に舞っていたわけなのだけれど、視界は大丈夫なのだろうか?
もちろんアイマスクに穴が開いていているのだろうけれど、それとて視界がかなり制限されて、踊るのは非常に難しいのではないだろうか?
いやはや、プロってすごい。
アラバスターがとことん醜く描かれている
宮原浩暢(LE VELVETS)演じるアラバスターがとことん醜く描かれているのも、この作品の特徴だろう。
メイクアップも、おどろおどろしいものだ。
昨日にて、ミュージカル「#アラバスター」全14公演が終幕しました㊗️
たくさんの熱いご声援、誠にありがとうございました🎶最後に、お弁当片手に居城に戻るアラバスターのオフショットと共に…🎩
舞台映像の配信🎥、実況版CD💿のお届けと、まだまだ「アラバスター」は終わりません💨#宮原浩暢 pic.twitter.com/AYbK448rjW
— ミュージカル「アラバスター」 (@mu_alabaster) July 11, 2022
エリザベートの「トート」や、フランケンシュタインの「怪物」が、舞台上では「まがまがしいが美しく」描かれているのとはきっぱり違う。
ちなみに、私の左隣の席が、母親と10歳ぐらいの娘、という観客だった。
幕が上がるなり、その10歳ぐらいの娘が思わずつぶやいたのが「怖い・・・」というセリフだったのだ。
見た目も醜悪、そしてその振る舞いも醜悪なアラバスターというわけだ。
一つだけ、音響の問題だったのか、私の耳の問題だったのか、せっかくの宮原浩暢の美声が少し割れて聞こえたような気がしてならなかった。
迫力のある大声量だったのだが、音楽的にはいまひとつという感じがぬぐい切れず・・・・
美しさって何?
涼風真世の少女のような声が歌い上げる「美しいと愛されて、醜いとののしられる・・・」が何度も頭の中でリフレインした。
美しいと愛される・・・半分正解で半分不正解かな、と思った。
美しければ美しいで、迫害されるということもあると思うからだ。
あの沢口靖子も、学生時代は彼女の美しさに教師がタジタジになってしまい授業ができなかったとか、「あなたは普通の生活を送るのは無理でしょう」と言われたというエピソードがある。
山本富士子は、日銀の最終選考まで残っていたが「美しすぎるから、男性職員の仕事の妨げになるだろう」という理由で不採用になっているというエピソードもある。
要するに「難なく」生きるには、容姿も美しすぎず、平均値付近にいるのが良いということになるんじゃないだろうか?
目に見えるものでジャッジしたがる人間が多いこの世の中では、そういう対処しかできないのかもしれない。
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運営者情報
姉本トモコ(@tomoko1572) 東京都出身の舞台芸術愛好家。 高校時代(1980年代!)から、セーラ服のまま劇場に出入りする青春時代を送る。 好きな場所は日比谷界隈、一番好きな劇場は帝国劇場。 ...
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作品情報
キャストなど
キャスト
アラバスター:宮原浩暢(LE VELVETS)
ゲン:古屋敬多(Lead)
小沢ひろみ:AKANE LIV
小沢力仁:馬場良馬
ロック:矢田悠祐
亜美:涼風真世
治田敦、田村雄一、遠藤瑠美子、穴沢裕介、岩橋大
演出・音楽・振付等
原作:手塚治虫
脚本・演出:荻田浩一
音楽:奥村健介
企画協力:手塚プロダクション
※手塚治虫と手塚プロダクションの「塚」の字は、「ヽ」がつく旧字表記が正式
最終更新日 2022年7月5日