2022年上演

【2022年】2年待った『ミス・サイゴン』

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2020年にはキャスト一新とのことで、チケット確保して待っていたにもかかわらず、コロナウイルス蔓延の影響で、全公演中止となったミス・サイゴン。

もうこのキャスティングで上演されることはないか?と思っていたが、2年を経て上演をされることに。(※ただし2020年で予定されていたキム役の大原櫻子は2022年公演への参加は無し)

それでも、開演直後は関係者のコロナ感染者が認められたとかで中止になった公演もいくつかあり、私もそのために見逃した回があった。

なお今回の観劇数は5回。

ダブルキャスト・トリプルキャスト・クワドラブルキャストの観劇状況は以下の通り。

公演中止等もあったので、全キャストをコンプリートするのは難しいか?!と思っていたのだが、プリンシパルキャストはすべて観劇することができた。

エンジニア:市村正親、駒田一、伊礼彼方、東山義久をコンプリート
キム:高畑充希、昆夏美、屋比久知奈をコンプリート
クリス:小野田龍之介、海宝直人、チョ・サンウンをコンプリート
ジョン:上原理生、上野哲也をコンプリート
エレン:知念里奈、仙名彩世、松原凜子をコンプリート
トゥイ:神田恭兵、西川大貴をコンプリート
ジジ:青山郁代、則松亜海をコンプリート

観劇メモ

会場や観劇をした日など。

演目名

ミス・サイゴン

会場

帝国劇場

観劇日

2022/8/6(Sat)ソワレ
2022/8/7(Sun)マチネ
2022/8/13(Sat)ソワレ
2022/8/26(Fri)マチネ
2022/8/28(Sun)マチネ

4人4色エンジニア

今回はエンジニア役がクワドラブルキャスト(4人)だったので、チケット予約時には非常に悩んだ。

でも、好奇心は抑えられない・・・・

ということで結局全部見てしまった。

さて、最初に観た伊礼エンジニアだが、想定内であったにもかかわらず、伊礼エンジニアが舞台上に登場した瞬間、思わず声を上げそうになってしまった。

「若っ!」

なぜって、艶々の黒い髪、肌の艶・・・

これまで、市村正親や駒田一のエンジニアを見慣れていたので、びっくりするぐらい若く感じられた。

全然違うタイプのエンジニアを見た、という感じだ。

そして、もうひとりの新エンジニア、東山義久が非常に良かった。

私の認識だと彼は「ダンサー」なので、キャスト発表の際に「エンジニア役に東山義久?」と不思議に思った。

あらためて彼の経歴を調べてみると、2005年に「レ・ミゼラブル」のアンジョルラス、2019年に「イヴ・サンローラン」でサンローランを演じていた。

つまり、歌も歌っていたのね・・・・

しかし、2005年あたりは私が激務の時期だったため観劇はほとんどしていない、つまり「観劇空白期間」だったので、ノーマークだった。

そして、2019年のイヴ・サンローランも、ダブルキャストの海宝直人でみていたので、東山義久はノーチェックだった。

もっと早くミュージカル俳優としての東山義久を意識しておくんだった!

さて、個人的な好みでいうと、今回一番好みだと感じたのがこの「東山エンジニア」

一番ギラギラしていて、「まったくカタギじゃない」雰囲気が好みだったのと、2幕後半のあの有名な見せ場「アメリカンドリーム」がスタイリッシュでクール。

ダンサーだからこその動き。

どんな役にも「正解」はない、だからどんな新しい役も作れる、そう感じさせてくれたのが東山エンジニアだった。

例えば、一幕冒頭のシーン。

東山エンジニアは、戦下の村で呆然と立ち尽くす少女(キム)をさらうかのように乱暴に連れ去る。

まるで誘拐。

ヤクザ、それも極悪ヤクザにしか見えない。

ほかの3人のエンジニアが、「かわいそうな少女に一見優しく手を差し伸べる」のと全く対照的だ。

ちなみに、市村エンジニアはどさくさに紛れて淡々とキムを連れ出すちゃっかりしたエンジニア、伊礼エンジニアは「優しいお兄さんを装って」キムに手を差し伸べておきながらキムの背後からヒップラインなどを確認しているエロいエンジア、駒田エンジニアは「ちょっと半グレみたいな恰好をしているけれど、性悪ではない優しい親戚のおじさんが助けに来たんだよね?」とも思えるエンジニア。

4人とも全然違うので、本当に面白かった。

ミス・サイゴン、キム

今回5回観劇したが、キムは昆3+高畑1+屋比久1の割合でみた。

圧倒的歌唱力・昆夏美

昆夏美のキムを見る回数を多くしたのは、「もしかしたら彼女にとってこれが最後のキム?」と思ったからだ。(いやわからないが)

彼女を最初に「ロミオとジュリエット」(2011年)のジュリエット役で見たときに、「すごい新人が出てきたな」と度肝を抜かれた。

そして「この人にキムの役やってもらいたいなぁ」と思ったら、3年後の2014年にはキム役にキャスティングされていて本当にうれしかった。

歌える女優はたくさんいるし、みんなそれぞれにいいと思う・・・が昆夏美は私の中では別格である。

だって、歌唱力がずば抜けているから。

今回もどのシーンもよかったのだが、やっぱり一番印象に残ったのは、わが子タムを守るためにトゥイに銃を向けるシーンかな。

「さーわーらーないでぇーーー!」、このシーンで脳内ドーパミンどばどばでまくりである。

我が子を守るために殺人を犯してしまうキム、書いているだけで目頭が熱くなる。

ちなみに、この歌詞は原語では” You will not touch him. Don’t touch my boy. He’s what I live for. He’s my only joy.”だそうである。

この母親の強い意志は、確かな歌唱力あってこそ表現できるものだと思う。

ホントにベトナム少女にみえた・屋比久知奈

屋比久知奈には1幕の最初の歌いだしでびっくりさせられた。

なぜってまるで少女のような声だったから。

確かに今回の3人のキムの中では、一番若いようだ。(2022年8月時点で28歳)

それでいて「命をあげよう」のシーンではしっかりお母さんになっているし、本当に素晴らしかった。

高い演技力・高畑充希

高畑充希も可憐だった。

音を一つ一つ丁寧にしている感じの歌い方だったのと、死ぬと決めた後の「虚無」の表情が印象に残っている。

ふとした表情が都度都度印象に残る役者だなぁ、と思った。

おそらく役作りにこだわりがあるのだと思う。

一番好きなシーン「クリス激昂」

ミス・サイゴンで一番好きなシーンは?と聞かれると、あのロマンティックなデュエット「お日様と月(Sun and Moon)」が歌われるラブシーンだったり、キムが息子タムへの思いのたけを「命をあげよう」と歌い上げるシーンだったりすることが多いんじゃないかと思う。

しかし、私が一番好きなシーンは、2幕バンコクのホテルで、クリスがエレンに「私とキム、どちらをとるの?」と詰め寄られ、クリスが激昂するシーン。

このシーンでクリスの葛藤がわかるからだ。

ミス・サイゴンは日本初演(1992)も見たが、当時は自分自身が若かったので「ふーん、アメリカに帰って別の女と結婚したんだー、クリスって不実な男。」としか思えなかった。

このクリスが激昂するシーンも、初演当初は「え?妻に詰められクリス逆切れ?」としか感じられなかった。

しかし、少し歳を取ると、クリスの米国兵士という境遇が話をややこしくしていてんだな、ということがぼんやり理解できてくる。

3人のエレンは、包容力があって母性を感じさせる松原エレン、ストレートに感情をぶつける知念エレン、可憐だが達観しているかのような仙名エレン。

今回一番好みだったのは、松原凛子のエレン。

理由は、ほかの二人に比べると体格も少しどっしりしていて「菩薩」という雰囲気がでていたのと、クリスに詰め寄るときにも冷静さが垣間見えたから。

「クリスが頼りたくなるのもわかる」という感じ。

エレン×クリスの全パターンはもちろん観れていないのだが、松原エレン×小野田クリスが、私的に一番よかったかな。

男が泣きながら激昂する・・・女としては「わかった、わかった、もういいよ。」と優しく抱きしめてあげるしかない、そんなシーン。

3人のクリス、共に非常に説得力のある演技で、全員よかった。

二番目に好きなシーン「キムとジョンの話が嚙み合わない」

次に私が好きなシーンは、やはりバンコクのシーンで、ジョンがキムを訪ねてくるシーン。

ジョンは「クリスは帰国して結婚した」ということをキムに言おうとするが、キムは話を聞かない。

それどころかキムは舞い上がって、タムに「パパに会えるよ♪」とウキウキで語りかけるしまつ。

あきらめたジョンは「切り出せない、俺じゃダメだ」とつぶやく。

この二人の嚙み合ってない二重奏が、のちの悲劇を予感させてとにかく悲しい。

今回のジョン役は、上原理生と上野哲也。

そもそもサイゴンで、クリスにキムをひきあわせたのはジョンだ。

二人の悲劇の最初のきかっけを作ったのはジョンだ。

「ちゃんと責任とれよ!」と言いたくなるのだが、ジョンにはそれができない。

そうした後悔と無力感が「こんな愛に生きる女・・・・」という歌詞に乗せられる。

歌唱力では上原ジョンが上なのだが、上野ジョンの過去への後悔や自分の無力さに対する葛藤の表現がとてもよい。

不遜かもしれないが、こうして葛藤している男性にはものすごく色気を感じる。

そのほかの見どころ

ミス・サイゴンでは毎回「ドラゴンダンサー」のシーンが楽しみ。

バック転など高度なアクションが入るので、「ケガしないでね」とはらはらしながら毎回見ている。

ドラゴンダンサーのうち、大久保徹哉が印象に残った・・・2幕のバンコクのシーンで「レーザーボーイ」もやっていて、それもインパクトが強かったから。

あそこまで筋骨が美しいと、肉体そのものが芸術。

バンコクでエンジニアが客引きするシーンでは、下手(しもて)でレーザーボーイが踊っているのだが、そのシーンだけは顔を左側に向けて(下手側を向いているってこと)、舞台センターはみていない。

すばらしい肉体美。

 

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またアンサンブルでは、見慣れているせいか、萬谷法英が出てくるとやっぱり目を引いてしまう。

サイゴンの婚礼のシーンで、舞台上手(かみて)でうどん・・・じゃなかったフォーを無心で食べているオジサンを演じている。

本当にアツアツのフォーにみえるし、本当に麺が見えそうな食べ方で芸が細かいよなぁ、と思う。

最後は、どんぶりから汁をきるマイムまでやっている。

その萬谷法英、2幕ではバンコクのクラブオーナーで、エンジニアの雇い主なのだが、東山エンジニアとのからみの時には、「てめぇ、なんだ、そのドヤ顔」というアドリブ?が入ったうえ、「俺のセリフまだ終わってねぇよ」というアドリブまで入っていた。

こうしたベテランアンサンブルのこなれたアドリブは見ていて面白い。

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姉本トモコ 東京都出身の舞台芸術愛好家。 高校時代(1980年代!)から、セーラ服のまま劇場に出入りする青春時代を送る。 好きな場所は日比谷界隈、一番好きな劇場は帝国劇場。 観劇する対象は、主にミュー ...

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作品情報

キャストなど

キャスト

エンジニア:市村正親/駒田一/伊礼彼方/東山義久
キム:高畑充希/昆夏美/屋比久知奈
クリス:小野田龍之介/海宝直人/チョ・サンウン
ジョン:上原理生/上野哲也
エレン:知念里奈/仙名彩世/松原凜子
トゥイ:神田恭兵/西川大貴
ジジ:青山郁代/則松亜海

阿部紘大、有木真太郎、石毛美帆、伊藤広祥、今村洋一、伊宮理恵、植木達也、江崎里紗、大久保徹哉、大津裕哉、大場陽介、岡本華奈、川島大典、小島亜莉沙、小林風花、齋藤信吾、佐々木淳平、島田連矢、鈴木満梨奈、仙名立宗、髙田実那、田中 奏、土倉有貴、練子隼人、早川一矢、春口凌芽、樋口祥久、広瀬斗史輝、深堀景介、藤岡義樹、藤田宏樹、古川隼大、松本悠作、萬谷法英、三浦優水香、宮野怜雄奈、村上貴亮、森田茉希、横田剛基、蘆川晶祥

演出・音楽・振付等

製作:東宝株式会社
オリジナル・プロダクション製作:キャメロン・マッキントッシュ
作:アラン・ブーブリル/クロード=ミッシェル・シェーンベルク
音楽:クロード=ミッシェル・シェーンベルク
演出:ローレンス・コナー
歌詞:リチャード・モルトビー・ジュニア/アラン・ブーブリル
ミュージカル・ステージング:ボブ・エイヴィアン
オリジナルフランス語テキスト:アラン・ブーブリル
追加振付:ジェフリー・ガラット
追加歌詞:マイケル・マーラー
舞台美術:トッティ・ドライヴァー
翻訳:信子アルベリー
訳詞:岩谷時子
舞台美術:マット・キンリー
編曲:ウィリアム・デヴィッド・ブローン
舞台美術原案:エイドリアン・ヴォー
衣裳:アンドレアーヌ・ネオフィトウ
照明:ブルーノ・ポエット
音響:ミック・ポッター
映像制作:ルーク・ホールズ

『ミス・サイゴン』日本プロダクション
音響補:ニック・グレイ
照明補:セーラ・ブラウン
衣裳補:リー・タッシー
ミュージカル・スーパーヴァイザー:アルフォンソ・カサド・トリゴ
振付補:リチャード・ジョーンズ
日本プロダクション演出:ジャン・ピエール・ヴァン・ダー・スプイ
プロデューサー:齋藤安彦/塚田淳一

最終更新日 2022年8月30日

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