2022年上演

【2022年】どこまで進化するのか?!『エリザベート』東京公演

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https://lasfloresrojas.com

2020年には、東京公演だけでなんとチケットを21枚もおさえて(狂ってるかも!)待っていたけれど、結局幕が開かなかった『エリザベート』。

2022年は、前回と異なり、チケット争奪戦で思うようにチケットが取れず、私としてはかなり少ない4枚のみ、となった。

今回の観劇数は4回。

ダブルキャスト・トリプルキャストの観劇状況は以下の通り。

エリザベート(オーストリア皇后):花總まり、愛希れいかをコンプリート
トート:山崎育三郎、古川雄大をコンプリート
フランツ・ヨーゼフ(オーストリア皇帝):田代万里生、佐藤隆紀をコンプリート
ルドルフ(オーストリア皇太子):立石俊樹
ゾフィー(オーストリア皇太后):涼風真世、香寿たつき
ルイジ・ルキーニ(皇后暗殺者):黒羽麻璃央、上山竜治をコンプリート

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一部ピンぼけ、すみません!

ルドルフの甲斐翔真の回はたまたまチケットが当たらず、ゾフィーの剣幸についても狙った回が当たらず、ということで今回は見逃し。

ちなみに少年ルドルフは、井伊 巧、西田理人、三木治人の全員をコンプリート

観劇メモ

会場や観劇をした日など。

演目名

エリザベート

会場

帝国劇場

観劇日

2022/10/28(Fri)ソワレ
2022/11/01(Tue)ソワレ
2022/11/07(Mon)マチネ
2022/11/13(Sun)マチネ

大躍進!黒羽麻璃央ルキーニ!

彼のキャリアはWikipediaによると2012年ごろからなのだが、私が最初に彼を見たのは、2019年の『ロミオとジュリエット』のマキューシオ。

次が2021年の『ロミオとジュリエット』のロミオ。

・・・そういうわけで、私の中では、彼は長身で線の細い美しい男子、という印象だった。

だから「ルキーニではなくてルドルフのほうがハマるのでは?」というのが私の正直な感想だった。

そう、全幕を通してグレーの小汚い衣装を着て、ピエロのようにふるまうあの役を、この美しい青年が演じるというのは、全く想像がつかなかったのだ。

さて、幕が上がって初回の印象は、「なんか新鮮なものを見た」という印象だった。

ところが、回を重ねるごとに、もう10年も前からこの役をやっていたんじゃないか、と錯覚するぐらい、自然なルキーニになっていたことに驚いた。

黒羽麻璃央はこの役をやることで、役者としての可能性を広げたことは言うまでもないし、演技力が高いことも証明できただろう。

いやぁ、うれしい誤算だった。

ここまで良いとは思ってなかったので、良い意味で期待を裏切られた。

あとは、歌唱力をもうちょっと!

若いので、まだ期待できると思う。

花總まりと並んで愛希れいかも「レジェンド」でいいと思う

『エリザベート』を見たことがない人から、「花總まりと愛希れいかの、どちらでみればいい?」という質問をもらったことが何度かあるのだが、いつも回答に困っていた。

できれば「両方見て!」と言いたい。

花總まりは、宝塚歌劇団のエリザベート初演時(1996年!)のエリザベートで、あれから27年たった今も未だエリザベートを演じ続けているという、奇跡の人だ。

1996年の宝塚雪組「エリザベート」の公演は、確か夏になる前だったと思う。(ネットで調べたら6月だった。)

当時はまだ若くて今ほどは金銭的に余裕がなかったので、観劇が趣味とは言えども、月に1度劇場に行けたらラッキーぐらいの頻度で通っていた。

そういうわけで、1996年の宝塚雪組「エリザベート」は、たぶん金銭的な事情でチケットはとっていなかった。

ところが、たまたま日比谷の東京宝塚劇場の近くを通りかかったときに、チケットを余らせている人がいて、その方から1階席の一番後ろの席を定価で譲っていただけることになったのだ。

それが私のこの作品との出会い。

観劇後の感想は「とんでもないものを見てしまった!」というものである。

その時のエリザベートが花總まり。

今思うと、当時彼女は20代前半という若さだったのだが、ヴィンターハルターの描いた肖像画からそのまま飛び出てきたような白いドレスの花總まりが、脳裏にこびりついて離れなかった。

それから30年近く経過しているのに、ゆるやかにしか年を取っていない花總まり、まさにレジェンドである!

そして、芝居、歌、ダンスの3拍子揃った完璧な女優、愛希れいか。

フランツに求婚された後のシーンで、「幸せになりましょ♪」とのんきにはしゃぐものの、フランツからネックレス(首輪?)をプレゼントされ、それをフランツにつけてもらった瞬間、ハッ!とした表情を見せ、「お、重い・・・とんでもない重荷を背負ってしまった?!」と気づく表情が絶妙だった。

さらに、若干31歳(2022年11月時点)で、少女シシィはともかく、往年期のシシィを凄みをもって演じられるとか、もう天才としか言いようがない。

愛希れいかも、もはや「レジェンド」でいいと思う。

役への愛を感じられた山崎育三郎のトート

山崎育三郎のトートは、エリザベートへの愛もさることながら、山崎育三郎自身のトートという役への愛を感じた。

また、彼自身が役者としての円熟期を迎えている印象を受けた。

声もものすごく伸びるし、オーラもビシバシに感じた。

2020年は全公演が中止になり、もう山崎育三郎トートは幻か?と思っていたのだが、2022年にこうして見ることができたのは、本当に奇跡。

特に『最後のダンス』は、彼の歌唱力を余すところなく出し切った感があり、ただただすごい、のひとこと。

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幻の公演チケット。2020年は初日の席が取れていた。

役作りが全く異なるフランツ(田代万里生と佐藤隆紀)

一途にエリザベートを愛し続けた皇帝フランツは、田代万里生と佐藤隆紀で、かなり異なる役作りをしていたのが非常に興味深い。

自信にあふれたキラキラ・リア充皇帝の田代万里生と、際限まで自我を押し殺した節制皇帝の佐藤隆紀。

本当に対照的。

それなのに、どちらも皇帝フランツとしては非常に説得力がある。

ちなみに今回からメイク技術が変わったのだろうか?

技術的な詳しいことはわからないのだが、往年期のフランツのビジュアルに「おや?」と思わされることがあった。

それは、往年期のフランツの顔にしわとたるみが違和感なく現れていて、ビジュアル的説得力がかなり増していたことだ。

特に田代万里生はキュートな顔立ちなので、2015年当初は、往年期のフランツはビジュアル的にちょっと無理があるなぁ、という印象がぬぐえなかった。

いまでも38歳と十分若いし、そもそも彼のような容姿の人は歳をとっても若々しい印象がぬぐえない。

しかし、今回はメイクの効果がすごい!と感じられた。

よって、2幕の「二隻のボート」では、年老いてもなお皇后を求め、そして永遠に彼女を得られない絶望と悲しみが、十二分に表現された。

ちなみに田代万里生フランツは、「二隻のボート」では毎回本当に涙を流していた。

エリザベートに「わかって、無理よ・・・」と言い放たれて、田代万里生フランツが目を見開いて絶望の表情を浮かべるシーンが、とても切ない。

コケティッシュな役作りが独特、涼風真世のゾフィー皇太后

「宮廷でただ一人の男」と呼ばれているのに、とても可愛いゾフィー皇太后。

この独特の役作りは、好きな人からしてみたら「たまらない」という感じだろう。

実際、私も涼風真世のゾフィーをみると、毎回脳内から快楽物質が出まくりであった。

もちろん、こうした遊び心のある独特の役作りも、高い歌唱力があってこそ。

「一人の母親」が皇帝フランツに、「息子は自由と叫んだだけ、陛下、ご慈悲を死刑はやめて!」と訴えるシーンでは、「息子は自由と叫んだだけ」の後に、ゾフィーの「結構ね」という歌詞が入る。

ここを声を張り上げて「結構ねっ!」歌う役者と、冷ややかに「結構ね」と呟くように歌う役者がいるのだが、涼風真世は前者。

息子の命乞いをする哀れな母親に、強靭に声を荒らげる恐ろしい女性でもある。

可愛らしさと恐ろしさ、その絶妙なバランスが見事。

アンサンブル&トートダンサー

今回は東京公演4回のみの観劇になってしまったので、アンサンブルやトートダンサーは「もっと細かく見たかった!」という悔恨が残った。

今回は、ヘレネに原 広実が戻ってきて、前回ヘレネだった彩花まりがヴィンディッシュ嬢に。

気のせいなのか原 広実が少しふっくらとして、「安産型だわ!」のヘレネに説得力が増していたように思う。

彩花まりのヴィンディッシュ嬢は、歴代のヴィンディッシュ嬢の中でも、とりわけ気味が悪かった。(もちろん褒めている。)

異様なほど真っ白に塗った顔は、あの横浜メリーを彷彿とさせた。

薄ら笑いや、「この人うそをついている!」を目をむく表情の一つ一つが、じわっと怖い、そんなウィンディッシュ嬢だった。

家庭教師役は、前回の、色白ぽっちゃりの七瀬りりこから、いかにもまじめで厳しそうな真記子に。

いつからか、1幕冒頭で、エリザベートの父マックスと、この家庭教師が「不倫関係」にある、というシーンが差し込まれるようになったのだが、今回の家庭教師は、まじめで堅物にみえる真記子が演じているので、そのギャップが面白い、と思った。

帝国劇場内部

トートダンサーは、舞台上で激しく動き回っているので、顔を識別するのが難しいのだが、今回は、澤村 亮が目に留まった。

とりわけ、背中のラインがきれいだったのが目を引いた。

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姉本トモコ(@tomoko1572) 東京都出身の舞台芸術愛好家。 高校時代(1980年代!)から、セーラ服のまま劇場に出入りする青春時代を送る。 好きな場所は日比谷界隈、一番好きな劇場は帝国劇場。 ...

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作品情報

キャストなど

キャスト

エリザベート(オーストリア皇后):花總まり/愛希れいか
トート:山崎育三郎/古川雄大
フランツ・ヨーゼフ(オーストリア皇帝):田代万里生/佐藤隆紀
ルドルフ(オーストリア皇太子):甲斐翔真/立石俊樹
ルドヴィカ/マダム・ヴォルフ:未来優希
ゾフィー(オーストリア皇太后):剣 幸/涼風真世/香寿たつき
ルイジ・ルキーニ(皇后暗殺者):黒羽麻璃央/上山竜治

マックス(エリザベートの父):原 慎一郎

ツェップス(新聞の発行人):松井 工
エルマー(ハンガリー貴族):佐々木 崇
シュテファン(ハンガリー貴族):章平
ジュラ(ハンガリー貴族):加藤 将

リヒテンシュタイン(女官長):秋園美緒

<アンサンブルキャスト>(男女五十音順)
朝隈濯朗/安部誠司/石川 剛/奥山 寛/川口大地/後藤晋彦/柴原直樹/白山博基/田中秀哉/福永悠二/港 幸樹/横沢健司
天野朋子/彩花まり/彩橋みゆ/池谷祐子/石原絵理/華妃まいあ/原 広実/真記子/美麗/安岡千夏/山田裕美子/ゆめ真音

<トートダンサー>
乾 直樹/五十嵐耕司/岡崎大樹/小南竜平/澤村 亮/鈴木凌平/山野 光/渡辺謙典

<スウィング>
廣瀬孝輔/山下麗奈

<少年ルドルフ>
井伊 巧/西田理人/三木治人

演出・音楽・振付等

脚本/歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽/編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
演出/訳詞:小池修一郎(宝塚歌劇団)
音楽監督:甲斐正人
美術:二村周作
照明:笠原俊幸
衣裳:生澤美子
振付:小尻健太、桜木涼介
歌唱指導:山口正義、やまぐちあきこ
音響:渡邉邦男
映像:奥 秀太郎
ヘアメイク:富岡克之(スタジオAD)
演出助手:小川美也子、末永陽一
舞台監督:廣田 進
稽古ピアノ:中條純子、宇賀村直佳、石川花蓮
オーケストラ:東宝ミュージック、ダット・ミュージック
指揮:上垣 聡(東京・名古屋公演)、宇賀神典子(大阪・福岡公演)
翻訳協力:迫 光
プロダクション・コーディネイター:小熊節子
制作:廣木由美、渡辺桃子
アシスタント・プロデューサー:江尻礼次朗
プロデューサー:岡本義次、坂本義和、服部優希
製作:東宝

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