2022年上演

【2022年】切なすぎる『ブラッド・ブラザーズ』

「ブラッド・ブラザーズ」が日本初演から、すでに30年とは、月日が経つのは早いもの。

私は、噂には聞いていたのだが日本初演(1991年)は見逃しており、2009年版を観たのが初めてだった。
(柴田恭兵のミッキーみてみたかった。。。)

ちなみに、今回の演出は、日本初演時にサミー役を演じた吉田鋼太郎。

観劇メモ

会場や観劇をした日など。

演目名

ブラッド・ブラザーズ

会場

東京国際フォーラム ホールC

観劇日

2022/3/26(Sat)ソワレ

愚かで哀れなミセス・ジョンストン

ブラッド・ブラザーズといえば、ミセス・ジョンストンが、死んだ二人の息子を前にして「嘘だと言ってーーぇ!」と歌い上げるあのシーン。

それ以外の曲は、記憶の糸を手繰ってようやく思い出せるが、「嘘だと言ってーーぇ!」は勝手に脳内でリフレインされる。

それぐらいインパクトの強いシーンだ。

今回、ミセス・ジョンストンを演じたのが、堀内敬子。

かなりふっくらしていて、子だくさんのシングルマザーの雰囲気がとてもよく出ていた。

さて、毎回この作品に触れると思うのだが、とにかくミセス・ジョンストンは愚かで哀れ。

無計画に買い物しては支払いに困窮するのと同じように、無計画にミセス・ライオンズの取引を受け入れてしまう。

そして、最後はミッキーの気持ちも知らずに、「お前たちは双子の兄弟なんだよ」と要らんことを言ってミッキーを逆上させ殺人犯にしてしまう。

哀れすぎる。

愚かで哀れではあるが、人の道には外れておらず、むしろ善人であるところが、また切ない。

堀内敬子のミセス・ジョンストンは、そういう雰囲気をよく醸し出していた。

静かな狂気、ミセス・ライオンズ

今回は、一路真輝がミセス・ライオンズ。

予想を全く裏切らない美しい上流婦人だった。

スタイルも若いころから変わっておらず、細くて華奢。

そしてなによりも、一路真輝は、どんなにバタバタしてもエレガントなのである。

それは、「アンナ・カレーニナ」のヒロインを演じた時にも感じた。

ミセス・ライオンズが刃物を持ち出してミセス・ジョンストンに襲い掛かろうとするシーンがあるのだが、かように狂ったシーンにおいてもエレガントなのだから、一路真輝はすごい。

ちなみに、ミスター・ライオンズは鈴木壮麻。

一路真輝と鈴木壮麻は、かつて「エリザベート」でも夫婦だった!

なつかしい。

それにしても二人とも上流階級の夫婦、という設定が似合いすぎ。

同じ日に生まれて同じ日に死んだ双子

ミッキー演じた柿澤勇人、いつのまにすごくいい役者になっていてびっくりした。

小学生として出てきた時も全く違和感がなかったし、大人になってから向精神薬のオーバードーズで狂っていく様子も、とてもよかった。

ウエンツ瑛士のエドワードも、なかなかのはまり役。

2009-2010に田代万里生で観たときも感じたけれど、ウエンツ瑛士も無垢な金持ちの息子、というキャラクターによく合っている。

なお、反抗期を迎えたエドワードが、母親であるミセス・ライオンズに向かって言い放つセリフ、「ママなんて、お〇〇〇!」には、驚いた。(笑)

この演出って以前にもあったっけ?

ウエンツ瑛士の口からそんな言葉が出てくるなんて~!

しかも、お上品な一路真輝のミセス・ライオンズに向かって、である。

隠れた主役?ナレーター:伊礼彼方

この作品において、重要な役割を果たしているがナレーター。

ナレーターといっても脇で舞台を支える役どころではなく、がっつりセンターに出てきてソロパートを歌うという、とってもおいしい役回り。

このナレーターが、未来を予測した不気味な歌を歌いあげることで、舞台に緊張感が走る。

ルックスの良さと歌唱力のある伊礼彼方だから、できたこと。

その他

ミュージカルの舞台ではおなじみの河合篤子。

今回は、ライオンズ家が引っ越した後に、その家に越してきた新しい住人を演じるシーンがあった。

そして、エドワードを探すミッキーから「ねぇ、おばあちゃん!」と呼びけられ、「おばあちゃん?!」と仰天するシーンが、ほのかに笑えた。

本当に芸達者な人だなぁ、と思う。

作品情報

キャストなど

キャスト

ミッキー:柿澤勇人
エドワード:ウエンツ瑛士
リンダ:木南晴夏
ミスター・ライオンズ:鈴木壮麻
サミー:内田朝陽
ナレーター:伊礼彼方
ミセス・ライオンズ:一路真輝
ミセス・ジョンストン:堀内敬子

家塚敦子、岡田 誠、河合篤子、俵 和也、安福 毅

スウィング:黒田 陸、町屋美咲

演出・音楽・振付等

脚本・作詞・作曲:ウィリー・ラッセル
演出:吉田鋼太郎
翻訳・訳詞:伊藤美代子
音楽監督:前嶋康明
美術:中越 司
照明:原田 保
音響:角張正雄、高橋秀雄
衣裳:西原梨恵
ヘアメイク:宮内宏明
振付:木下菜津子
歌唱指導:長谷川 開
演出助手:井上尊晶、本藤起久子
舞台監督:北條 孝、本田和男

最終更新日 2022年3月29日

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