2023年上演

【2023年】良質なおとぎばなしができるまで『ファインディング・ネバーランド』

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ホッと心が温まるような、そんな良質な作品だった。

子供向け作品ではないけれど、ストーリーに恋愛要素がほぼなく(メアリーが夫に隠れてキャナン卿とコソコソデートはしているが)、過激な描写等もなく、小学生から大人まで楽しめる非常にターゲット層が広い作品だな、という印象。

なお、大人キャストはすべてシングルキャストだったが、子役は2チームに分かれており、それぞれ「BELIEVEチーム」と「PLAYチーム」。

Believeチーム

Playチーム

今回はラッキーなことに、その両方をコンプリートすることができた。

観劇メモ

会場や観劇をした日など。

演目名

『ファインディング・ネバーランド』

会場

新国立劇場中劇場

観劇日

2023/5/20(Sat) マチネ
2023/5/26(Fri) マチネ

やっぱり善良な人間を演じる濱田めぐみが素敵

濱田めぐみという役者は、非常に役のふり幅の広い女優だと思うが、私は、彼女が「善良な人間」を演じている時が一番素敵だと思う。

シルヴィアは、夫を亡くして4人の男子を育てている上流階級のお母さん、という役どころ。

良識的で、でも、常識に縛られていなくて、本質を見ることができる、優しいけれど芯のある上流婦人は、彼女だからこそ、という感じだった。

そしてなんとこの作品では、病に倒れ、「お迎えが来た」といって光の国(というかネバーランドか?)に旅立っていくシーンもあり、非常に神々しかった。

キラキラの好青年山崎育三郎

さて、山崎育三郎について。

『エリザベート』のトートもよかったけれど、やっぱり好青年で見るほうが私的には落ち着くなぁ、という感想。

まあ、好青年といっても、ちょっと変わり者ではあるけれど、善意の人間であることには変わりない。

実際の年齢よりもはるかに若く見えてキラッキラしているところも、このジェームズ・バリという役にピッタリ。

2023/5/26(Fri)マチネでは、2幕でとんでもないセリフの言い間違いをして、一瞬ヒヤッとしたけれど、サラッと正しいセリフに言い直していたのも、なんだかホッコリしたハプニングだった。

それはジェームズ・バリが母とのちょっと悲しい思い出をシルヴィアに語るシーン。

事故で亡くなってしまったジェームズの兄の死を悼んで、立ち直れない母の前に、子供だったジェームズが「兄の服を着て」出ていった、という思い出を語るシーンで、なんと、育三郎氏、「母の服を着て・・・・」と言ってしまったのだ。

一瞬私も「ん?」となった。

「え?女装?」と脳内が変換し、宮本亜門演出の『プリシラ』に脳内トリップをしそうになってしまった。

観客は誰も笑ってなかった。

2秒後ぐらいに「兄の服を着て」と改めて言い直していた。

誰も笑っていなかったが、私は心の中でクスっとした。

顔をゆがめて神妙な表情のまま、表情をくずさないでいた濱田めぐみもさすがだ。

確かに、ここで笑ったり突っ込むわけにはいかないよね。

私的には一瞬緊張がほぐれた瞬間で、ホッコリしたかな。

印象的な子役ちゃん

この作品の子役たちも素晴らしかった。

全員よかったのだが、あえて特筆すれば、「BELIEVEチーム」でジョージを演じた越永健太郎が、大人のように成熟した歌唱力だったこと。

あと数年したらもう大人。

大人になった彼を見るのも楽しみではあるが、大人と子供のちょうど間にいる彼をみれたのはとてもよかったな。

ちなみに、越永健太郎は2021年10月にオリバーもやっているが、その時は、残念ながら彼のオリバー・ツイストは当たらなくて、見れてなかったのだ。

そして、今回見ることができて本当に良かった。

追記

2023.6.26
越永健太郎、名古屋公演降板のお知らせが!

やはり東京公演で、彼を子役として見れたのは「奇跡!」であったようだ。

そして「PLAYチーム」でピーターを演じた小野桜介。

寂しくて傷ついた子供をピュアに演じられていたのと、声がとてもきれいだった。

魅力的な出演者たち

杜けあきを久しぶりに見た気がする。

でも歌唱力も演技力も、以前と何一つ変わらず、よかった。

夢咲ねねのスタイルの良さにうっとりした。

晩餐会シーンで、子供たちとジェームズ以外はフリーズする、というシーンがあるのだが、その時にちょっとうつむいた姿勢でフリーズしたメアリー(夢咲ねね)のうなじがほっそりとしていて本当にきれい。

ちょっとしたしぐさがこんなにも絵になるなんて素晴らしい。

今回、武田真治の歌がよかった。

もともと高い歌唱力の持ち主ではないと思うのだが、今回の曲は彼にあっていたのかな、セリフのような歌のような、そんな感じがとてもよかった。

遠山裕介がハゲ役とか、かなり意外。

舞台上でホンモノの大型犬をつかっているのも演出として非常に良かったと思う。

舞台裏では動物の専門家が世話しているんだろうか?よくしつけられたワンちゃんたちだった。

その他雑感

2023/5/26(Fri)のマチネは、2階席に学生の団体がいた。

女の子だけなので女子高だろう、引率の先生の名札を見たら「文華女子高校」と書いてあった。

知らない高校だがgoogle検索してみたところ、西東京市の学校らしい。

ミュージカル界を代表するスターで、かつテレビ出演もしていて全国区で顔が知れている山崎育三郎主演の、しかも、穏やかで品の良いこの作品を、学生の団体に見せるというのは、とてもよいマーケティングだと思った。

カーテンコールで、山崎育三郎が二階席に向かって投げキッスをしたら「キャー!」という叫び声が上がったのにはちょっとびっくりしたが、まあ、たまにはいいのではないだろうか。

また、本公演が上演されているのは風薫る5月。

特にマチネを終えて外に出ると、風が本当に気持ちいい季節。

舞台を見てすがすがしい気持ちになれて、さらに、戸外の風に吹かれて気分よく。

最高!

2023/5/20の新国立劇場周辺

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姉本トモコ(@tomoko1572) 東京都出身の舞台芸術愛好家。 高校時代(1980年代!)から、セーラ服のまま劇場に出入りする青春時代を送る。 好きな場所は日比谷界隈、一番好きな劇場は帝国劇場。 ...

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作品情報

キャストなど

キャスト

ジェームズ・バリ:山崎育三郎
シルヴィア・デイヴィス:濱田めぐみ
フック船長/チャールズ・フローマン:武田真治
メアリー・バリ:夢咲ねね
デュ・モーリエ夫人:杜けあき

キャナン卿:遠山裕介
クローマー:廣川三憲
ヘンショー:星 智也

家塚敦子、石川 剛、伊藤かの子、榎本成志、大久保芽依、工藤 彩、塩川ちひろ、永松 樹、福島玖宇也、MAOTO、ルイス魅麗セーラ (五十音順)

ジョージ:越永健太郎、ポピエルマレック健太朗(Wキャスト)
ジャック:生出真太郎、豊田侑泉(Wキャスト)
ピーター:小野桜介、長谷川悠大(Wキャスト)
マイケル:奥田奏太、谷慶人(Wキャスト)

スウィング:大倉杏菜、齋藤信吾(五十音順)

演出・音楽・振付等

原作:デヴィッド・マギー脚本によるミラマックス映画作品/アラン・ニーによる戯曲『The Man Who Was Peter Pan』
台本:ジェームズ・グラハム
作曲・作詞:ゲイリー・バーロウ&エリオット・ケネディ

翻訳・演出:小山ゆうな
訳詞:高橋亜子
音楽監督:小澤時史
美術:二村周作
照明:勝柴次朗
音響:山本浩一
映像:上田大樹
衣裳:前田文子
ヘアメイク:宮内宏明
振付:松田尚子
歌唱指導:亜久里夏代
稽古ピアノ:森本夏生
演出助手:河合範子
舞台監督:小笠原幹夫

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