2022年上演

【2022年】コミカルでスタイリッシュなサスペンス『8人の女たち』

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当初、この作品は鑑賞する予定はなかったのだが、たまたま東京千秋楽のチケットをお譲りいただく機会があったので、まだ残暑が少し残る池袋、サンシャイン劇場へGO!してきた。

観劇メモ

会場や観劇をした日など。

演目名

8人の女たち

会場

サンシャイン劇場

観劇日

2022/9/4(Sun)マチネ 東京千秋楽!

この作品について

私は、「8人の女たち」はフランソワ・オゾン監督の映画(2002年)を見ていたので、てっきり映画が原作だと思い込んでいた。

ところが、原作は戯曲。

フランスの劇作家ロベール・トマ作の戯曲であり、初演が1961年8月28日のパリだそうである。(Wikipediaより)

また、フランソワ・オゾン監督の「8人の女たち」は、キャストが歌ったり踊ったりするシーンがあり、完全なるミュージカルとまではいかなくても「ミュージカルちっく」な要素もあったが、原作(ロベール・トマ作の戯曲)のほうはどうなんだろう?

今回見たのも「元宝塚OGによる舞台」なので、歌や踊りがあるのか?と重きや、歌や踊りはなかった。

細かく言うと、ところどころでキャストが歌ったり踊ったりするシーンはあったものの、いわゆる「ミュージカルナンバー」はなかった。

8人の女優たち

この作品のタイトルは「8人の女たち《 HUIT FEMMES 》」というぐらいなので、彼女たちの豊かな個性が見ものである。

今回の8人のキャストは、全員宝塚OGで、かつ全員「トップスター経験者(男役5名、女役3名)」なのだから、見ごたえは確かである。

ギャビー:湖月わたる

実は、湖月わたるを「宝塚歌劇以外の」舞台で観たのは初めてだったかもしれない。

いや、ちょっと記憶があいまいなので確かではないが、もしそうだとすると、彼女が「女性」として演じている姿を見るのはこれが初めて、ということになる。

少しくぐもった何とも言えないトーンの声が魅力的。

湖月わたるについては、演技力以前に、その存在感の大きさが印象に残った。

映画では大女優カトリーヌ・ドヌーヴが演じた役、存在感の大きな女優じゃないと演じられない役だろう。

1971年6月生まれなので51歳。

長身に、細すぎず太すぎない絶妙なプロポーション、肉付きも筋肉質に寄りすぎておらず、ふっくらと柔らかそうな質感の身体は、上流婦人としては非常に説得力があった。

ギャビー役は、立っているだけでギャビーではないといけないので、湖月わたるの容姿や立ち振る舞いはとてもよかったと思う。

オーギュスティーヌ:水夏希

この作品において、オーギュスティーヌは非常に「おいしい役」だと思っている。

もし私が女優で、この作品のオーディションを受けに行くのなら、絶対にこの役でオーディションを受ける。

フランソワ・オゾン監督の映画の中でも、イザベル・ユペールがシリアスな顔をしながら実のところものすごく楽しそうに演じていた。(ような気がする)

水夏希も、舞台上で思う存分不幸自慢をして、本当に楽しそうに演じているように見えた。

衣裳も、オーギュスティーヌの衣裳だけ、赤を基調としている中に「ビビッドなターコイズ」が挿し込まれていてとにかく個性的。

赤のタータンチェックのスーツにターコイズを挿し色とする発想はプロのスタイリストの仕業だろう。

衣裳でも、役柄の個性を物語ることができるんだなと思った。

また、そんな絶妙な衣裳を着こなせる水夏希もすごい。

ピエレット:珠城りょう

今回の8人の女優の中で、私のとって初めてみるのが珠城りょう。

それもそのはず、2021年8月に宝塚歌劇団を退団したばかり。(ここ20年ほど宝塚歌劇は「ごくたまに」しかみていないもので・・・)

まだ男役の名残があるのか少し野太い声で、クール。

映画ではファニー・アルダンがとにかくクールでかっこよく演じていたが、珠城りょうも長身でかっこいい。

この役に長身とがたいのよさは必須!

ルイーズ:夢咲ねね

今回意外!な配役だと思ったのが、ルイーズ役に夢咲ねね、というキャスティング。

意外だと思った理由は、役どころが、ポーカーフェイスを気取った「あばずれ」という役だから。

映画では、エマニュエル・ベアールが妖艶に演じていた役。

夢咲ねねといえば、『1789-バスティーユの恋人たち-』のオランプ、『グレート・ギャツビー』のデイジー、『ポーの一族』の シーラ・ポーツネル男爵夫人といった、上流階級側の人の役のイメージがあったので、メイド!それも実はあばずれ!というのは本当に意外。

意外だったが、「こんな役もはまるんだ!」と思わされた。

女優ってすごいね。

シュゾン:蘭乃はな

さて、シュゾン、こちらは映画ではヴィルジニー・ルドワイヤンが演じていた「まじめな優等生」タイプの大学生。

蘭乃はなのシュゾンは、映画でヴィルジニー・ルドワイヤンが演じたシュゾンとイメージがとても良く似ている。

混乱した場を、シュゾンが取り仕切るシーンが続くが、可憐でかわいらしく、しかも賢いという雰囲気がとても出ていてよかった。

カトリーヌ:花乃まりあ

か、か、かわいい!

反則なぐらい可愛い!

舞台の幕が上がった瞬間、絶句してしまった。

なにせ15歳の少女という設定。

いや、本当に15歳にしか見えない。

無垢な目つき、自由奔放なふるまい・・・・なに、この可愛すぎるいきものは???

映画では、まだ二十歳をちょっとすぎたばかりのリュディヴィーヌ・サニエが演じていて、それも本当にかわいかったが、花乃まりあのカトリーヌもとにかく愛くるしい。

マミー:真琴つばさ

まさかのおばあちゃま役。

あれ?真琴つばさってそんな年だったっけ?としらべたらまだ還暦手前。(だよね)

映画では、ダニエル・ダリューが演じていたのだが、実は映画のほうではこの役の印象はあまりなく、どんなだったか思い出せないので、近日中にもう一度映画を見てみようと思う。

真琴つばさは、もともとの顔立ちがはっきりしていて、メイクをするとさらにパキっとするので、「あー、お金持ちの老婦人にこういう派手な人いるよね」という感じが出ていた。

シャネル:久世星佳

いちばん意外なキャスティングは、この人、久世星佳。

最初はギャビー役か、さもなくばピエレット役か?と思っていた。

ところが、まさか、まさかのシャネル役。

ちなみに、映画ではフィルミーヌ・リシャールが演じており、まるまる太った黒人女性だが、久世星佳演じるシャネルは、ほっそりとしたシャネルだ。

しかも、映画ではレズビアンという設定だったが、この作品ではレズビアンという設定はなく、「ギャンブル依存症」という設定。

映画ではギャビー(カトリーヌ・ドヌーヴ)が「レズビアンは病気よ、ちゃんと診てもらいなさい」というセリフがあるのだが、さすがに2022年の今、そのセリフはまずいだろう。

20年前の2002年に映画を見た時にも「え?!それは偏見、差別では?」と思ったぐらいだから、現代だと完全OUT!になってしまう。

さて、久世星佳がシャネル役、というのは意外と思ったものの、やっぱり久世星佳らしいな、と思った。

私の中では久世星佳は「いぶし銀」的な女優で、あの「ベルサイユのばら」では、オスカルでもアンドレでもない「アラン・ド・ソワソン」を、ものすごい存在感を持って演じた人なのだ。

あんなに素敵なアランは見たことがない。

そういう意味で、どんな役でも久世星佳が演じると、何とも言えない味わいのある役になるのである。

舞台美術

舞台美術が素晴らしい作品は多いのだが、とりわけこの作品の舞台美術は「私の好み」だった。

「衣裳」も舞台美術の一つであると考えるならば、8人の女たちの「衣裳」もすべて赤と赤紫に統一されていて、とてもきれいだった。
(※ちなみにポスターでキャストが身に着けている衣裳は舞台上では身に着けられていなかった)

シーンは、1幕も2幕も「屋敷の中」だけ。

・・・なので、凝った舞台美術ではなかったが、おそらく「色」のトーンがシックでおしゃれな雰囲気だったのだと思う。

舞台の季節は雪深い「冬」なので、ダークな青み系レッドで統一されていて、目にも非常に心地よい舞台美術だった。

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姉本トモコ(@tomoko1572) 東京都出身の舞台芸術愛好家。 高校時代(1980年代!)から、セーラ服のまま劇場に出入りする青春時代を送る。 好きな場所は日比谷界隈、一番好きな劇場は帝国劇場。 ...

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作品情報

キャストなど

キャスト

ギャビー:湖月わたる
オーギュスティーヌ:水夏希
ピエレット:珠城りょう
ルイーズ:夢咲ねね
シュゾン:蘭乃はな
カトリーヌ:花乃まりあ
マミー:真琴つばさ
シャネル:久世星佳

演出・音楽・振付等

原作:《 HUIT FEMMES 》by Robert THOMAS
上演台本・演出:板垣恭一
翻訳:山口景子
美術:乘峯雅寛
照明:三澤裕史
音響:友部秋一
音楽:かみむら周平
衣裳:十川ヒロコ
ヘアメイク:佐藤裕子
アクションコーディネーター:渥美博
振付:当銀大輔
演出助手:髙野玲
舞台監督:藤崎遊

最終更新日 2022年9月6日

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