2020年4月に公演が中止になってしまったこの作品。
私のチケットも返金された。
その後、2020年9月に3日ほど、5公演上演されたが、そちらへは日程が合わず、私は観劇ならず。
その作品が、キャストは違えど、2024年に上演。
見終わった後、いろんな感じ方ができそうな作品だな、と思った。
ヒロインヴァイオレット役は三浦透子と屋比久知奈をコンプリート。
ヤングヴァイオレット役は嘉村咲良と水谷優月で観劇。(生田志守葉見逃し)
Contents
観劇メモ
会場や観劇をした日など。
演目名
『VIOLET』
会場
東京芸術劇場 プレイハウス
観劇日
2024/4/11(Thr)ソワレ
2024/4/13(Sat)ソワレ
2024/4/20(Sat)ソワレ
必要だから旅をしている
ヒロインのVIOLETは、旅、バス旅をしている。
それも長距離の。
自分の傷を癒すには、物理的に身体を移動させる必要があったんだなぁ、と思わされるのは、人間は、自分との対話だけでは気づけないことがあるから。
たぶん。
自分の身体の周りの景色が変わることによってしか、到達できない場所も、あるのかもしれない。
ところで、ヴァイオレットの母親は、冒頭でヴァイオレットの口から「亡くなった」と語られている。
本当だろうか?
ヤングヴァイオレットが母について知ろうとすると、かたくなにそれを拒む父、というシーンが前半に何度もあった。
ラスト近くで、ヴァイオレットが父親に「私が美しいと自分のもとを去ってしまいそうだから、だから、わざと傷つけて醜くしたのでしょう?」と噛みつくシーンがある。
単なるヴァイオレットの妄想か?
私には、ヴァイオレットがそのように感じるなら、それが真実なのかもしれないと思われた。
また、父も、故意にしたのではなかったとしても、そうした無意識下の希望があったのかもしれない、そしてそれが現実化した。
ありえるだろう。
こうしたシーンをつなぎ合わせて考えると、私には「母親は亡くなったのではなくて家庭を捨てたのでは?」と感じられた。
演出について
ヒロインは顔に大きな傷を負っている、という設定。
でも、特殊メイク等で傷を作っているわけではない。
あくまでも、物語中、彼女と接する人のリアクションで、観客は「ああ、ヒロインは顔に大きな傷をもっているのか」と理解できる仕組み。
また、物語の中でも、有色人種にまつわるデリケートな事件も発生するが、これらの登場人物は、メイキャップ等で有色人種であることを表現はしていない。
この辺りは、『ラグタイム』と共通する演出方法だ。
私は、この演出には共感できる。
観客は、特別なメイキャップや衣装がなくても、ストーリーを理解できる。
また、この物語はルッキズムに対するアンチテーゼでもある(かどうかはは知らないが)、と考えれば、さらにこの演出には納得だ。
二人の若い軍人
フリックの東啓介と、モンティの立石俊樹が、ともに好演であった。
ヴァイオレットという心に深い闇を持つ若い女性と、関わることで、それぞれの持つ闇や光が、行ったり来たりする。
ちなみに、2020年キャストではフリックが吉原光夫、モンティが成河であった、そっちも見ておきたかなったなぁ。
カルト教の嘘
伝道師の原田優一が、好演通り越して怪演で素晴らしかった。
私は、彼のクリス(『ミス・サイゴン』)も、マリウス(『レ・ミゼラブル』)も好きなんだけれど、クレイジーな役に振り切っている彼も好きだ。
そういえば、あまり彼の踊りは見たことがなかったが、カルト宗教(でいいんだよね?)の伝道師としてパフォーマンスをする彼の切れの良い踊りに感服。
ここまで踊れるとは知らなかった。
キレがいいけれど、キュートな踊り。
現代でも、エセ・スピリチュアル詐欺なんかは、世の中にごまんとあふれているが、「そんなものに引っかかるなんて!」と笑うわけにはいかない。
いつの時代にも、人の傷をエサにして稼ごうとする人はいるし、誰でもそういうものに引っかかる可能性はある。
伝道師の手にかかれば、顔の傷も治り美しくなれると信じて旅をつづけたヴァイオレットを、私は笑うことができない。
キャストボード
各回のキャストボード
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運営者情報
姉本トモコ(@tomoko1572) 東京都出身の舞台芸術愛好家。 高校時代(1980年代!)から、セーラ服のまま劇場に出入りする青春時代を送る。 好きな場所は日比谷界隈、一番好きな劇場は帝国劇場。 ...
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作品情報
キャストなど
キャスト
ヴァイオレット(Wキャスト):三浦透子/屋比久知奈
フリック:東啓介
モンティ:立石俊樹
ミュージックホール・シンガー:sara
ヴァージル:若林星弥
リロイ:森山大輔
ルーラ:谷口ゆうな
老婦人:樹里咲穂
伝道師:原田優一
父親:spi
ヤングヴァイオレット(トリプルキャスト):生田志守葉/嘉村咲良/水谷優月
<スウィング>
木暮真一郎
伊宮理恵
演出・音楽・振付等
音楽:ジニーン・テソーリ
脚本・歌詞:ブライアン・クロウリー
原作:ドリス・ベッツ「The Ugliest Pilgrim」
翻訳・訳詞:芝田未希
演出:藤田俊太郎
美術:原田愛
照明:日下靖順
音楽監督・ピアノコンダクター:江草啓太
衣裳:前田文子
ヘアメイク:宮内宏明
振付:新海絵理子
音響:宮脇奈津子
映像:横山翼
歌唱指導:柳本奈都子
稽古ピアノ:宇賀村直佳
照明助手:関口大和
演出助手:守屋由貴
制作:今野亜希
舞台監督:倉科史典
宣伝美術:榎本太郎
宣伝カメラマン:伊藤大介(SIGNO)
最終更新日 2024年4月21日