2023年上演

【2023年】最善にして最悪の選択『ダーウィン・ヤング 悪の起源』

https://lasfloresrojas.com

韓国の大ヒット作が日本初演。

しかも主演に、ダンスと歌のために韓国留学していた渡邉 蒼がキャスティングされているではないか。

渡邉 蒼の歌唱力については、『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』で確認済みなので、主演!と聞いて、非常に楽しみであった。

なお、ダーウィン・ヤングは大東立樹と渡邉 蒼のダブルキャスト。

異なる二人のダーウィンを観劇することができた。

2023/6/10(Sat)ソワレ

観劇メモ

会場や観劇をした日など。

演目名

『ダーウィン・ヤング 悪の起源』

会場

シアタークリエ

観劇日

2023/6/10(Sat) ソワレ
2023/6/11(Sun) マチネ
2023/6/22(Thr) ソワレ

想像以上、度肝抜かれた

舞台作品であること以上に、まず、ストーリーに圧倒された。

これはすごい。

人間の深い業。

そして思った、このストーリー、日本人からは絶対出てこないストーリーなのではないか?ということ。

ちなみに、原作のパク・チリは、30代で夭逝しているそうな、そういう事実も相まって、とてもミステリアスでずっしりきた。

そして、人が人を裁くってなんなんだろうな?と際限なく考えさせられるストーリーだった。

利己的な理由でもなく、快楽的な理由でもない、他にどうしようもなかったがゆえの殺人、それも敬愛する友を殺す。

最善にして最悪の選択?

ダーウィンも、父のニースも、そして祖父のラナーも、敬愛していた人を殺すときには、これ以上もなく深く悲しんでいる。

2幕ラストの、祖父、父、息子の3重奏も、息が詰まるほど素晴らしかった。

石川禅、矢崎 広、渡邉 蒼という、表現力も歌唱力の高い演者が歌うから、素晴らしすぎて鳥肌が立った。

ちなみに、2023/6/10(Sat)ソワレには、台本・作詞のイ・ヒジュンが観劇されていて、カーテンコールで渡邉 蒼が紹介していた。

見ると、休憩時間中の手洗い待ちで私の目の前に並んでいた小柄な女性が、その人だった。

ちょうど目の前に、韓国語で話す女性がいるなぁ、と記憶していたのだ。

こんな憂い顔の矢崎広は初めて見た

矢崎広は好青年のイメージがあったので、今回、ティーンエイジャーの父親で、エリートで、そしてなによりも暗い過去を引きずって終始不機嫌・・・という姿は強烈にインパクトがあった。

ニースのソロナンバーは高音が多く用いられていて、なにやら難解そうな曲が多かった印象。

恐ろしい秘密がその裏に隠れているからこそ、そのメロディーと歌声を聞くと鳥肌が立つ。

いままで特別に注目していなかったのだが、これからはちょっと気になる存在になりそうだ。

二人のダーウィン

今回もまた、新しい若い才能に出会えて幸福だった。

渡邉 蒼も大東立樹も、2023年6月時点でともに18歳。

この作品の中では16歳という設定だ。

まず、北斗の拳でその歌唱力と演技力を確認済みだった渡邉 蒼、まったく期待を裏切らない出来栄えだった。

とくに1幕最後に、ニースが殺人犯だと勘づいたあたりからの変化がすごくよかった。

そして、これまで名前も知らなった大東立樹、すでに安定した実力と貫禄のある渡邉 蒼とは全く異なり、ピュアな小鹿のようなダーウィンで、こちらもまた非常に魅力的だった。

やっぱり石川禅はすごい

石川禅は、私の中では何を見ても文句のつけようがないので、あまり感想を書いてこなかった。

今回も、ただすごい、としか言えそうになかったので、あえて彼についてはコメントするのをやめようかな、と思っていたのだが、今回は少し思うところがあったので筆を進めることにした。

2幕の後半、ニースの不機嫌に付き合うラナー、そのラナーはもちろんニースが過去に親友を殺めたなどということは知らないはず。

でも、ところどころで、実はラナーはニースがジョンを殺したことを知っているのではないか?と思わされた。

気づいているけれど気づかないふり・・・だとすると、さらに闇は深い。

ラナーが飄々と振舞えば振舞うほど、怖い、鳥肌が立つ。

ちなみに、ラナーが16歳の少年革命家として登場してくるシーンでは、大隊長(キャップを目深にかぶっている石井一彰)から年齢を尋ねられるシーンで、石井一彰がアドリブで「58歳か?」と毎回いじっていたのだが、2023/6/22のソワレでは「59歳か?」に変わっていた。

そう、6/22は石川禅の誕生日だったのね。

その他

折井理子が、ラストのナンバーで高音を響かせていたが、なんとも切ないメロディーだった。

愛しているものをこの手で殺める、殺めた後に深く悲しむ、でもそうするしかなかった、そうした感情を際立たせるような切ないメロディー。

少年時代のバズ(植原卓也)とジョン(石井一彰)の、お互いの弱みを握り合った心理戦みたいなシーンも、ずっしり来た。

何も知らずに無邪気にしている少年ニース、そのあとでとんでもないどん深闇に落ちるわけだが、その無邪気なニースとは裏腹に、バズとジョンはすでにうっすら暗い影をちらつかせている。

重い、重いなぁ。

また、レオは、人が人を裁くことなんてできない、というような趣旨のことをダーウィンに話していたことがあったにもかかわらず、ニースが殺人犯だとわかると、ダーウィンが「僕たち親友だろ?内緒にしておいてくれ」と懇願するも、そのダーウィンを振り切ってしまう。

実際に殺人犯を知ってしまったら、何も知らない時と同じ判断はできない、ということか。

レオの葬式ではルミが、叔父のジョンの死の真相を突き止めるのをあきらめない、と言い切るシーンがあるのだが、この先のことを想像して怖くなったのは私だけではないだろう。

ところで、私は子供のころから時々、自分が完全犯罪を犯している夢をみることがある。

なんだかわからないがどうしようもない理由があって人を殺めたらしく、すごく苦しいのだ。

夢の中には死体は出てこないのだが、死体を何らかの形で片付けているらしく、それを見つからないようにと苦心している夢なのだ。

前世があるならば、前世の記憶なのかもしれない。

快楽殺人でもない限り、人を殺めたらきっと想像を絶するほど苦しいに違いない。

そして、思うのだ、殺されるより殺すほうが、きっと苦しいし辛いのではないか?と。

韓国ミュージカルにハマりそう

私が子供のころは、ミュージカルといえば、アメリカ・ブロードウェイとイギリス・ウエストエンドだった。

そして近年になって、フレンチミュージカルや、ウィーンミュージカルも注目されるようになった。

そして、いま、韓国ミュージカルが、熱いように思う。

先日みた『マリー・キュリー』も韓国だし、そういえば『フランケンシュタイン』も『ブラックメリーポピンズ』も韓国ミュージカルだ。

こちらもどうぞ
【2023年】女性科学者と献身的な愛『マリー・キュリー』

あの有名な女性科学者を題材にした韓国ミュージカル。 そして主演が愛希れいかだ、ということで観に行ってきた。 私は割と韓国ミュージカルの雰囲気が好きなので、この作品もすぐに受け入れることができた。 【🎥 ...

続きを見る

人間の黒い部分をためらいなく描いている、という点が、共通点?いや、そうは言い切れないか。

私が書いています
運営者情報

姉本トモコ(@tomoko1572) 東京都出身の舞台芸術愛好家。 高校時代(1980年代!)から、セーラ服のまま劇場に出入りする青春時代を送る。 好きな場所は日比谷界隈、一番好きな劇場は帝国劇場。 ...

続きを見る

作品情報

キャストなど

キャスト

ダーウィン・ヤング:大東立樹、渡邉 蒼(Wキャスト)
ニース・ヤング:矢崎 広
バズ・マーシャル:植原卓也
レオ・マーシャル:内海啓貴
ジェイ・ハンター:石井一彰
ジョーイ・ハンター:染谷洸太
ルミ・ハンター:鈴木梨央
ラナー・ヤング:石川 禅

奥山 寛、折井理子

大谷紗蘭、熊野義貴、佐藤志有、社家あや乃、関根結花
髙田実那、髙橋莉瑚、田川颯眞、松村桜李、溝口悟光

演出・音楽・振付等

原作:パク・チリ
台本・作詞:イ・ヒジュン
作曲:パク・チョンフィ
編曲:サム・デイヴィス、マシュー・アーメント
潤色・演出:末満健一
日本版編曲改訂・音楽監督・ピアノコンダクター:松田眞樹
振付:大熊隆太郎
美術:田中敏恵
照明:加藤直子
音響:ヨシモトシンヤ
衣裳:惠藤高清
ヘアメイク:武井優子
映像:横山 翼・桜葉銀次郎
歌唱指導:西野 誠・木村聡子
舞台監督:鈴木 輝
演出助手:高橋将貴・新早由季
バンドコーディネート:東宝ミュージック
稽古ピアノ:中條純子
翻訳協力:コン・テユ
コーディネーター:高原陽子
企画:田窪桜子
制作:田中景子・中曽根さやか
プロデューサー:鈴木隆介・塚田淳一
オリジナル・プロダクション:ソウル芸術団
製作:東宝

最終更新日 2023年6月23日

-2023年上演