2023年上演

【2023年】女性科学者と献身的な愛『マリー・キュリー』

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あの有名な女性科学者を題材にした韓国ミュージカル。

そして主演が愛希れいかだ、ということで観に行ってきた。

私は割と韓国ミュージカルの雰囲気が好きなので、この作品もすぐに受け入れることができた。

観劇メモ

会場や観劇をした日など。

演目名

『マリー・キュリー』

会場

天王洲銀河劇場

観劇日

2023/3/24(Fri) ソワレ

科学者の生涯をミュージカル化?の不安

韓国で大絶賛され、日本上演においてもそれなりのキャストをそろえている作品だが、まず最初になぜ天王洲銀河劇場での上演なんだろう?と思ったのと、また、名前は有名すぎるほど有名だけれど科学の門外漢からすると実はよくわからない科学者を題材にして、ドラマを盛り上げるって可能なのか?という疑問があったので、実は少々心配していた。

単に私自身が科学の門外漢なので、実験や発明、実用化といった題材が、どうミュージカルとしてエモーショナルに仕上がるんだろう???と、本当に本当に未知数だった。

最初の疑問である、なぜ天王洲銀河劇場での上演なんだろう?のところはよくわからないままだが、ラボラトリにこもっている科学者にスポットライトを当ててみると、こんなに面白い話が飛び出てくるんだ、なるほどね、と思わされた。

そう、科学者の話がドラマティックではない、という思い込みは、単に科学者は常にラボラトリにおり、普段私たちからは見ていないからおこるだけ。

そうか、そういうところにあえてスポットライトを当ててみたということか。

科学者を扱っているという意味では、ジキルとハイドやフランケンシュタインという作品があるが、それとはやはり毛色が違う作品だ、という点で、この作品は非常に面白いと思った。

女性を支える男ピエール

私が子供のころ、伝記を読んだ際には、マリー・キュリーは「キュリー夫人」と紹介されていた。

そう、一人の女性科学者ではなくて、キュリー氏の配偶者、という立ち位置だった。

これはよく考えるとおかしな話で、彼女自身も科学者として実績を残しているのに、なぜ名前で呼ばれない?

そうした疑問は、マリー・キュリーがソルボンヌ大学に入った後のシーンで解明される。

男子学生たちは、「ここは女性の来るところではない」とばかり、やんややんやとマリー・キュリーをはやし立てるナンバーがあるのだ。

これをみて少しデジャブ。

それは、荻野吟子が医学校に入学した際も、「女は帰れ!」とばかりはやし立てられたことを思い出したのだ。

それは山田火砂子監督の「一粒の麦 荻野吟子の生涯」(主演/若村麻由美・山本耕史)の中にも出てくる。

ちょっと気になって調べてみたところ、荻野吟子(1851/4/4-1913/6/23)、マリー・キュリー(1867/11/7-1934/7/4)ということで、彼女たちは同時代の人と言って良いことが分かった。

この時代は、日本でもヨーロッパでも女性が大学で学ぼうとすると、こんな障害があったんだ、とあらためて驚かされる。

そのマリーを支える夫ピエールを演じた上山竜治がものすごくよかった。

この二人の関係においては、常にマリーが主役。

理解してくれる人が少ないため孤独になりがちな天才科学者の一人であるマリーを、献身的に支えているピエール、という不思議な安心感がそこに広がっていた。

夫婦だけれど、男女の愛というよりは、友情とか、同志としてのリスペクトをベースとした関係で、暖かさにあふれていた。

正直、これまで上山竜治は『レ・ミゼラブル』のアンジョルラスでみても、『エリザベート』のルキーニでみても、「うまい役者だよね」ぐらいの感想しか持てなかったのだけれど、今回のピエール役で、がらりと見方を変えた。

それぐらい素晴らしかった。

また、愛希れいかとの声の混ざりあいも美しく、特に高音部分が美しく、素晴らしかった。

愛希れいかブラボー!

彼女が主演じゃなければ、たぶん私はこの作品はスルーしていたはずだ。

そしてやはり愛希れいかは愛希れいからしく、学生から死の間際(60代後半でしょう)まで、何の違和感もなく演じ分け、好奇心に満ちたキラキラした科学者を演じてくれた。

私が書いています
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姉本トモコ(@tomoko1572) 東京都出身の舞台芸術愛好家。 高校時代(1980年代!)から、セーラ服のまま劇場に出入りする青春時代を送る。 好きな場所は日比谷界隈、一番好きな劇場は帝国劇場。 ...

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作品情報

キャストなど

キャスト

マリー・キュリー:愛希れいか
ピエール・キュリー:上山竜治
アンヌ:清水くるみ

能條 愛未
宇月颯
清水彩花
石川新太

坂元宏旬
聖司朗
高原紳輔
石井咲
大泰司桃子

ルーベン:屋良朝幸

演出・音楽・振付等

脚本:チョン・セウン
作曲:チェ・ジョンユン
演出:鈴木裕美
翻訳・訳詞:高橋亜子
音楽監督:大崎聖二
振付:松田尚子
美術:伊藤雅子
音響:原田耕児
照明:笠原俊幸
映像:ワタナベカズキ
衣装:前田文子
ヘアメイク:河村陽子
歌唱指導:平岡由香
ミュージシャンコーディネート:ダットミュージック
演出助手:米森真実
舞台監督:藤井伸彦
宣伝美術:榎本太郎
宣伝写真:端裕人
宣伝:株式会社ティップス・プラネット
票券:株式会社インタースペース
営業:木田波子
制作:たけだのりこ、設樂敬子
アシスタントプロデューサー:渡邉可奈子、石本秀一
プロデューサー:松本有希子、多田里奈、呉徳周
エグゼクティブプロデューサー:小見太佳子、清山こずえ
企画・制作:アミューズ

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