2022年上演

【2022年】人間の深い闇には理由はないのかもしれない『血の婚礼』

bloodwedding

https://lasfloresrojas.com

ロルカ、『血の婚礼』といえば、アントニオ・ガデス舞踊団のフラメンコでちょっと見たことがあるだけで、実はストーリーもよく知らなかった。

南スペインの、今にもカラカラに焼け焦げそうな悲劇だったんだ、と知った。

なお、2人の「少女たち」のうちの1人がWキャスト(澤田理央/脇山桃寧)だが、2回とも澤田理央で観劇した。

観劇メモ

会場や観劇をした日など。

演目名

血の婚礼

会場

シアターコクーン

観劇日

2022/09/17(Sat)マチネ
2022/10/01(Sat)ソワレ

熱すぎる、それじゃ火傷もするわ

ロルカはスペイン南部グラナダ出身。

この物語の舞台もスペイン南部アンダルシア地方。

確かにアンダルシアは暑い。

しかし、この物語も熱い。

熱すぎる。

レオナルド(木村達成)、花婿(須賀健太)、花嫁(早見あかり)、この3人の役者が、焼けただれそうな熱い思いを余すところなく語ってくれたのが、非常に良かった。

人の気質は、生きている土地の空気や気候にもよるのかも、なんてことを思わされた。

なぜって、この物語に出てくるような「自分ではどうにもできない熱情」とかいうものは、私にとっては正直「なんですかそれ?」状態だからだ。

3人の若い男女は、舞台上で激しく口論したり、もみ合って舞台上で転げまわったりする。

そこまでの熱情ってなんなのよ?なんなのよ?なんなのよ?

・・・そう、私にとっては未知との遭遇である。

木村達成はどこにもいなかった

舞台上に木村達成はいなかった。

そこにいたのは、底が見えない暗い目をした青年。

レオナルドだ。

「なにその怖い目?どうしちゃったの?」と不覚にもドキドキしてしまった。

抑圧された熱情を持て余して狂暴化している男・・・達成がこんな風に化けるなんて・・・期待はしていたけれど、期待以上だ。

演技の技術的なことはよくわからないけれど、瞳の輝きを暗くしたり、目の奥底に深い闇を垣間見せるのって、どうやってやるんだろう???

誰にでも闇はあるが、闇の量には個人差があって、とてつもない深い闇を抱えている人も、この世の中にはいるんだろうな、と思わされた。

1幕と2幕を演じ分けた須賀健太

今回、彼は今回初見だった。

Wikipedia等で調べたところ、子役出身の役者らしい。

1幕では好青年、2幕では復讐心の塊。

メイク等で顔もかなり変えていたけれど、こんなにも雰囲気って変えられるんだ、と思った。

ピュアで好感が持てた早見あかり

花嫁を演じた早見あかりも、今回初見。

ドラマ等で主演をつとめていたらしいが、全く知らなかった。

さて、この「花嫁」役は、下手な役者が演じると、とことん胸糞悪くなりそうだが、早見あかりの「花嫁」は、素直で余計な雑味がなくて好感が持てた。

気になったのは、アンダルシア地方の娘にしては、色が白いなぁ、ということぐらい。

二人の男が亡くなった後、「花婿」の母に「私は純潔です」と訴えるシーン、花婿の母からすると「は?だからナニ?」なのだが、「花嫁」はどういう意図でこれを言ったのか?、というのは演じる役者でかなり印象は変わりそう。

私が、早見あかりの「花嫁」に感じたのは、純粋さ。

裏を返すと、思慮の無さや無知。

つまり、まったくあざとさを感じなかったので、好感を持って見れた、ということだ。

呪われた女?安蘭けい

「花嫁」の懺悔(?)を聞きながら、花婿の「母」は、一瞬驚いたような表情をみせてから「誰も悪くない・・・」とかみしめるようにつぶやく。

呪われた女といっても過言ではないこの役を、安蘭けいが凄みをもって演じていた。

夫と息子を殺された暗い過去、いや暗いどころじゃなくてとんでもない過去を持つがゆえに、気難しく偏狭になった女。

些細なことがトリガーで、恨み・つらみ・呪いの言葉が彼女から噴き出てくる、長い長いセリフとなって。

しかし物語の最後のほう、「花嫁」の懺悔を聞きながら、安蘭けい演じる「母」はハッ!とした表情を見せる。

そして「こいつ(花嫁のこと)が悪いんじゃない・・・」と言うのである。

このセリフに、この物語の本質があるのか?と思った。

誰も悪くないし、人間の闇には理由なんかない。。。。

きっとそうだ。

雑感

この作品はストレート・プレイなので、歌や踊りはガッツリ「ミュージカルナンバー」としてあるわけではなく、必要に応じて差し込まれるだけ。

・・・なので、歌のシーンはギリギリまで削ってもよかったんじゃないか?と思った。

歌える木村達成と安蘭けいがまったく歌わない一方で、歌唱力に疑問が付く役者が歌っていた。

歌唱力に疑問が付く役者に無理に歌わせる必要はなかったんじゃないだろうか?

たとえ鼻歌程度のナンバーであっても、だ。

そこだけが残念でならなかった。

また、「少女たち」の一人を演じた澤田理央が非常に可憐だった。

調べたところ2010年1月生まれの12歳。

笑った顔が可愛い。

私が書いています
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姉本トモコ(@tomoko1572) 東京都出身の舞台芸術愛好家。 高校時代(1980年代!)から、セーラ服のまま劇場に出入りする青春時代を送る。 好きな場所は日比谷界隈、一番好きな劇場は帝国劇場。 ...

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作品情報

キャストなど

キャスト

木村達成
須賀健太
早見あかり

南沢奈央
吉見一豊
内田淳子
大西多摩恵
出口稚子
皆藤空良
澤田理央/脇山桃寧(Wキャスト)

安蘭けい

<演奏>
古川麦
HAMA
巌裕美子

演出・音楽・振付等

原作:フェデリコ・ガルシーア・ロルカ
翻訳:田尻陽一
演出:杉原邦生
音楽:角銅真実、古川 麦
美術:トラフ建築設計事務所
照明:齋藤茂男
音響:稲住祐平(エス・シー・アライアンス)
衣裳:早川すみれ(KiKi inc.)
ヘアメイク:国府田圭
振付:長谷川風立子(プロジェクト大山)
振付補:池田 遼(少年王者舘/おしゃれ紳士)
殺陣:六本木康弘
歌唱指導:都乃
演出助手:河合範子、矢本翼子(TSUMIKI)
舞台監督:足立充章

宣伝美術:加藤秀幸(grindhouse)
宣伝写真:伊藤元気
宣伝衣裳:TSUMORI CHISATO
宣伝スタイリング:山本亜須香(FUGAHUM)
宣伝ヘアメイク:大和田一美

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