観劇あれこれ

アーティストへの敬意として「出待ちをしない」ということ

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私は、いわゆる「出待ち」をしない。

出待ちとは、終演後に劇場の出入り口付近でアーティストが出てくるのを待つことである。

ちなみに開演前のアーティストの劇場入りを待つのは「入待ち」と言われる。

もちろん、私は「入待ち」もしない。

・・・と言っても、私は「出待ち」(や「入待ち」)という行為そのものを否定しているわけではない。

たとえば、演者や他人に迷惑をかけていないのならば出待ちも悪くないと思うし、宝塚歌劇団のファンのように、出待ち現場を仕切る責任者のような人がおり、参加者はかなり厳しいルールを守って出待ちを楽しむ、という文化があることも知っている。

しかし私は、私個人の考えに基づいて、出待ちをしないことにしている。

もし自分がアーティストなら?と想像するとできない

私が「出待ち」をしない一番の理由は、もし自分がアーティストだったら出待ちは「正直迷惑だ」と思うからだ。

仕事が終わってメイクを落として着替えて、さあ帰ろう!としたときに、知らない人から挨拶されたり、握手を求められたり、愛想よくふるまうことを求められるとしたら、かなり迷惑だ・・・と、私個人はそう思う。

もちろん、そうは思わないアーティストもいるかもしれない。

出待ちを歓迎して喜んでくれるアーティストもいるのかもしれない。

しかし・・・

「幕が上がっている間中、最大限の力を尽くしてファンを楽しませたではないか!まだ仕事をさせるのか?!」

「私のことを好きでいてくれるなら、仕事が終わった後は放っておいて!」

・・・私がアーティストなら、きっとそう感じる。

日本は確かに治安がいいので、知らない人から話しかけられても、そうおかしなことにはならないのはわかっているが、私個人的には、いきなり知らない人から声をかけられるのは怖いと思う。

当然だが、観客はアーティストのことをよく知っているが、たいていの場合、アーティストは観客のことを知らない。

つまり、知らない人から声をかけられる、ということになる。

そして、どんな人だか得体のしれない人に、とりあえず愛想よく対応しなければならないというのは、かなりしんどいことなのではないだろうか?

このあたりの感受性は人によって違うだろうが、私だったらちょっとつらいな、と思う。

私の関心はアーティストの「芸」

私が出待ちをしない、もう一つの理由が、私の関心はアーティスト個人ではなく、彼らの「芸」にあるからだ。

純粋に、彼らの歌や踊り、芝居が観たいのである。

それらは舞台上ですべて表現されるので、出待ちをしてまで、彼らが楽屋から出てくる姿を見る必要は全くない。

なお、アーティストは一般人に比べると容姿に優れた人が多いので、その姿を直接間近で見てみたい、という好奇心を持つ人も多いだろう。

私にも、そういう好奇心はあるにはある。

しかし、やはり、わざわざ楽屋出口で待ってまでその好奇心を満たそうとは思えないのだ。

出待ち以外で話す機会があったとしても・・・

私の関心はアーティスト個人ではなく、彼らの「芸」にあるので、仮にあるアーティストと会わせてもらえる機会があったとしても、正直話すことなど無い、と思う。

ちなみに私は、終演後、知り合いの演者を訪ねて楽屋を訪問したことが何度かある。

そのついでに、有名なアーティストと挨拶をさせてもらう機会も何度かあったが、とおりいっぺんの挨拶をしたら、もうあとは話すことはなく、そそくさと引き上げた。

とおりいっぺんの挨拶とは「〇〇さんの友人のトモコです、今回はお目にかかれて光栄です」程度のものだ。

もちろん、客席からしか見たことのなかったスターと直接対面できることは嬉しいには違いなかったのだが、挨拶を終えたら「早くこの場を立ち去らなければ!」という気持ちのほうが大きくなった。

「ファンなんです」といったところで「そうですか、ありがとうございます」で終わりだろうから、そんなことは言っても意味はないし、舞台の感想など求められてもないのにベラベラ喋るのも失礼だろう。

握手という、身体的接触を求めるのも無礼な気がするし、サインなんて面倒なことをさせるなんてもってのほかだ。

・・・・そんなわけで、知り合いを通じて挨拶をさせてもらったスター級のアーティストを前にしても、私は「彼らの時間を奪うわけにはいかない」とそそくさと退場するのである。

個人的に言葉を交わす機会があるのなら、この際聞いてみたいことがあるのでは?と思う方もいるかもしれないが、「無い」のである。

彼らの「芸」がすべてだからだ。

舞台芸術のアーティストは身体が資本

最後に、舞台芸術のアーティストは、身体が資本だ。

最高のコンディションでパフォーマンスするためには、体調管理が必至であるから、時間は貴重。

よって、見ず知らずのファンにかかわっている暇などないのではないだろうか?

必要以上に彼らの時間を奪わない、というのは、アーティストへの敬意の一つでもあるのだ。

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姉本トモコ 東京都出身の舞台芸術愛好家。 高校時代(1980年代!)から、セーラ服のまま劇場に出入りする青春時代を送る。 好きな場所は日比谷界隈、一番好きな劇場は帝国劇場。 観劇する対象は、主にミュー ...

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最終更新日 2022年9月25日

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