本作品も2020年に全公演中止となり、2022-2023にかけて上演がかなった作品。
割と珍しい、出演者が全員男性という舞台で、3人登場する女性はすべて、男性が女装をして演じる。
なお、今回はアーサー役(子役)がWキャストだったが、私は「酒井禅功」で観劇した。
Contents
観劇メモ
会場や観劇をした日など。
演目名
彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』
会場
Bunkamuraシアターコクーン
観劇日
2022/12/29(Thr) ソワレ
ちょっと変わった演出?!
日頃、ミュージカルを中心にみているので、「芝居」となるとおそらく別の脳が使われているのだと思う、いつもと違う「筋肉」を使ったかのような後味がある。
見る人を選びそうな作品だが、吉田鋼太郎演出のこの作品は、非常にテンポがよく、時にエキセントリックな表現があったり、と、私個人的には、好みのテイストだった。
出演者がオールメールというのも珍しいのだが、最初のシーンがとても変わっていた。
まず最初にそれが妙に印象に残った。
以下ネタバレなので、これから見る人は読みたくなければこのままこのページを閉じてもらいたいが、「あれ?!こんな演出ができるの?」とかなり驚いた。
それは・・・
開演前に座席に着席すると、視界に飛び込んでくるのは、舞台・・・まあそれは当たり前
、だってそこは劇場なんだから。
しかし、舞台のさらにその奥に、道路、一般公道が見えるのだ。
往来を歩く人、そして、車が行き交うのが見える。
「・・・ん?これ動画を見せられている????」
一瞬混乱してわけが分からなくなるが、オペラグラスでよく見ると、見ているものはリアルな公道と人や車だとわかる。
Bunkamuraシアターコクーンの舞台奥には扉があって、その扉はどうやら外につながっているようなのだ。
開演前の観客は、客席から、渋谷区の道路を見させられているのだ。
まもなく上演時間、というころ、赤いパーカーを着てマスクをした男が、舞台奥にある扉から入ってくる。
私の隣の席の観客は「なんだ?なんだ?一般人が劇場に紛れ込むのか?」と本気で言っていたぐらいだ。
もちろん、その男は、小栗旬演じるフィリップ・ザ・バスタード。
12世紀のイギリスが舞台であるにもかかわらず、赤いパーカーとマスクで登場させるところがなんともふざけている感じがして、とてもいい。
ちなみに劇場によって、劇場の構造は異なるだろうから、同じ演出がBunkamuraシアターコクーン以外でできるのかどうかも謎だし、できない場合はどんな演出になっているんだろうか?
ちょっと気になる。
脇役が面白かった
フィリップの小栗旬も、タイトルロール・ジョン王の吉原光夫も、フランス王の吉田鋼太郎もよかったのだが、やっぱりいつものごとく、脇役に目が行ってしまう私。
ヒューバート役の高橋努が、とっても人間臭い臣下を演じていて、やたらと印象に残った。
この方はテレビ・映画にも多く出られている方なのかしら???
たぶん、テレビ等でも見たことはあるのだと思う(・・・がテレビはあまり見ないので記憶に自信なし。)
激情の母性?!を持つコンスタンス役には玉置玲央。
元の顔も端正ながら、「女性」をデフォルメしたメークも良く映え、さらに大胆な顔芸で、より禍々しく美しいコンスタンスであった。
「これはいかに?」と思ったこと
1幕最初で、ジョン王吉原光夫の歌が聞けたのはうれしい誤算だった。
なぜならば、本作品は芝居であってミュージカルではないから、吉原光夫が歌うとは思っていなかったからだ。
ただ、歌を挿し込むなら、やはり一定の歌唱力をもった演者に歌わせてほしかった。
吉原光夫はともかく、他の役者たちの歌は、申し訳ないが、聞くのが少しつらかった。
これは、「血の婚礼」を見た時に感じたのとまったく同じことだ。
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無理に歌を入れる必要はなかったのではないか?
役者としては一流であるにもかかわらず、本領ではない「歌唱」を披露せざるを得ず、本人たちも苦しかったのではないか・・・・、というのは考えすぎかな?
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運営者情報
姉本トモコ(@tomoko1572) 東京都出身の舞台芸術愛好家。 高校時代(1980年代!)から、セーラ服のまま劇場に出入りする青春時代を送る。 好きな場所は日比谷界隈、一番好きな劇場は帝国劇場。 ...
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作品情報
キャストなど
キャスト
小栗 旬、吉原光夫
中村京蔵、玉置玲央、白石隼也、高橋 努、植本純米
間宮啓行、廣田高志、塚本幸男、飯田邦博、坪内 守、水口テツ、鈴木彰紀、堀 源起、阿部丈二、山本直寛、續木淳平、大西達之介、松本こうせい、酒井禅功/佐藤 凌(Wキャスト) 五味川竜馬
吉田鋼太郎
演奏:サミエル 武田圭司/渡邊達徳 熊谷太輔/渡辺庸介
演出・音楽・振付等
作:W.シェイクスピア
翻訳:松岡和子
上演台本・演出:吉田鋼太郎(彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督)
美術:秋山光洋
照明:原田 保
音響:角張正雄
衣裳:宮本宣子
ヘアメイク:大和田一美
擬闘:栗原直樹
演出助手:井上尊晶 菅野将機
技術監督:小林清隆
舞台監督:倉科史典