ブロードウェイミュージカル『カムフロムアウェイ』の日本初演。
2001.9.11の事件にまつわるストーリである、ということ、それとキャスト全員プリンシパルクラスである、という前知識のみで観劇した。
すべての役がシングルキャストであった。
Contents
観劇メモ
会場や観劇をした日など。
演目名
ブロードウェイミュージカル『カムフロムアウェイ』
会場
日生劇場
観劇日
2024/3/10(Sun)ソワレ
2024/3/16(Sat)ソワレ
2024/3/19(Tue)ソワレ
2024/3/28(Thr)ソワレ
ハートフルな人間模様
アメリカ史上最悪のアクシデントが起きた2001.9.11から数日間の間に、某航空機に搭乗していた「多様な」人々の物語。
舞台はカナダの小さな町。
そこに、緊急着陸した飛行機の乗客が降り立った・・・という話。
休憩時間なしの100分の間に、オールプリンシパルクラスの役者たちが、かわるがわる様々な役を演じ続ける。
プリンシパルクラスの役者が、アンサンブルとして様々な役を演じ続ける、わけである。
役者たちは、舞台上で、ちょっとした衣装や小道具を変えて、「別人」になってしまうので、「あれ?いま何の役をやっている」とついていけなくなるシーンも少しあるが、ついていくのがそんなに難しいわけではない。
2024/3/16(Sat)ソワレのおけぴ鑑賞会のオリジナル人物相関図が、この作品を理解する手助けになるかもしれない。
実際、緊急事態時に、人々がこのように美しく助け合う、かどうかは、わからないが、すくなくともこのストーリー上は、人々はみなハートフルで暖かかった。
すべてのキャストは、冒頭に書いた通り、全員プリンシパルクラスのキャストで、どんなに短いフレーズのソロパートであっても、確実に「聴かせる」歌を歌ってくれる。
ハートフルな上、この上もなく贅沢な100分でもある。
印象に残ったキャラクター
何せ一人の役者が、いくつもの役を演じるので、一度には全部覚えきれなかったのだが、「あら、素敵♪」と思ったキャラクターはいくつもあった。
アメリカン・エアラインの女性パイロット
濱田めぐみが素敵だった。
私は、濱田めぐみが演じる「普通の人間」が大好きである。
今回の女性パイロットも、『スクール・オブ・ロック』のホレス・グリーン学院校長と同じぐらい、ハイキャリア。
濱田めぐみは、そういうキャラクターがとことんに合うんだよなぁ、と思わされた。
町の動物愛護団体職員
シルビア・グラブを見るのは久しぶりだったような気がする。
シルビア・グラブ演じる動物愛護団体職員は、「本当にこんな人、リアルにいそう!」というぐらいナチュラルなキャラクターだった。
「人間が優先だ」という声を「はぁ?何言ってんの?」とスルーして、せっせと動物救助にいそしむ姿が印象的だ。
また、「とても幸せな普通の人」ってこんな感じの人なのかなぁ、と思わされたのも、このキャラクターだ。
「(動物を世話する仕事)この仕事、嫌じゃない、だけど・・・」とうんざりした表情を見せたり、「子供が3人いるけれど、いいことばっかりじゃない、むしろ・・・」なんてことを言うのだが、幸せな人って、わざわざ「ドヤ!」と幸せであることを語ったりしないような気がするので、こういう人が、実は「とても幸せな普通の人」なのかなぁ、と思った。
スッピンにみえるメイクも素敵!
ビビリの都会っ子
加藤和樹の「ビビリ君」もいい感じだった。
常に半泣きで、小刻みに震えている様子が、可愛い!
ラストは、ケビン(浦井健治)の新しい恋人としても登場してきて、そのギャップも面白い。
アメリカ人女性とイギリス人男性のカップリング
安蘭けいと石川 禅のキスシーンがあったのが衝撃的だった!
それも数回。
離婚歴のある女性と、初老の男性が、短い期間で恋に落ちるとか、さりげなく素敵なストーリーである。
5日間の島での生活の後、別れたのか・・・・
・・・と思いきや、男性がアメリカに引っ越して彼女にプロポーズする、というオチ!
日本では、ミドルの恋愛ってあまり取り上げられないような気がするのだけれど、品があって素敵なカップルだったな。
新人リポーター
女子アナ、咲妃みゆ!
不必要に洗練されてない、素直で素朴な感じがよかった。
スキニージーンズをはいていたけれど、こんなに細かったんだ!という発見も。
それと、動物愛護職員演じるシルビア・グラブが動物に話しかけているシーンでは、照明の当たらない場所で、動物の声を演じていたのが咲妃みゆ。彼女の新たな側面を見れた気もした。
すべてのキャストの中で一番若いキャスト。
田舎町のウォルマートの垢ぬけていないおとなしい女性店員、という設定も面白かった!
島の巡査
ただの田舎の巡査なのに、絶大な存在感を放っていたのが、吉原光夫。
全然おかしくないシーンなのに、彼が何かを言うたびに、なんか笑いたくなるのはなんなんだろう?
巡査以外にも、島の「スペイン語がしゃべれる」体育教師、としても登場。
"Soy un profesor de gimnasia.(私は体育教師です)"のあとに、
”Soy un profesor de pasión."って聞こえたんだけれど、あってるかな?「情熱の教師」?
寄り添い~2人の女性の友情
やっぱり、柚希礼音はリーダーの役をやっていると、「あるところにある」という印象を受ける。『Factory Girls ~私が描く物語~』の時と同じ感想。
今回は、島のある団体のリーダー。
意図せずこの島にたどり着くことになったアメリカ人ハンナ(森公美子)を気にかけ、優しく寄り添う。
また、当作品では、森公美子が小鳥のように震える気弱な母であった。
「孫もいる」というセリフがあって、「え?!」と一瞬おもってしまったが、そうか森公美子自体も、もうそんな歳か。年齢不詳だからわからなかった。
ゲイのカップル
浦井健治と田代万里生のゲイカップルが絵的に素敵。
ビジネス上のリーダーは浦井健治だが、カップルとして主導権を握っているのは田代万里生のほう。
田代万里生のツンデレが新鮮でよかった。
そして、心が離れてしまった「彼」にこっちを向いてほしいと懇願する浦井健治の歌声も切ない。
すべてがハッピーエンドというわけではないこの物語、このカップルは結局破局する。
また浦井健治は、ストライキをする島のバス運転手としても重要な役を演じており、その演じ分けは見事だった。
田代万里生もイスラム教徒のアリとしても登場してくる。
アリとして登場するときには首の後ろがまっすぐに立った状態になるのですぐわかる。
衣装や小道具だけではなく、姿勢や歩き方でも演じ分けをしたってわけか。
町の町長
今回も、派手なミュージカルナンバーで盛り上げるシーンは、橋本さとしが担っていたように思う。
コミュニティセンターでの宴会の仕切り役としての町長は、ハロルド・ジドラーが出てきたのかと思った。(笑)
島には町ごとに町長がいて、それを全部橋本さとしがやっているのだが、個人的には、黄色い変な帽子をかぶっているおじいちゃん町長が好き。
あのへんな「訛り」もツボる。
その他
日生劇場のエントランスにはこのような展示物があった。
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運営者情報
姉本トモコ(@tomoko1572) 東京都出身の舞台芸術愛好家。 高校時代(1980年代!)から、セーラ服のまま劇場に出入りする青春時代を送る。 好きな場所は日比谷界隈、一番好きな劇場は帝国劇場。 ...
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作品情報
キャストなど
キャスト
安蘭けい
石川 禅
浦井健治
加藤和樹
咲妃みゆ
シルビア・グラブ
田代万里生
橋本さとし
濱田めぐみ
森 公美子
柚希礼音
吉原光夫
<スタンバイ>
上條 駿
栗山絵美
湊 陽奈
安福 毅
(五十音順)
演出・音楽・振付等
◆CREATIVES
Book,Music,Lyrics:Irene Sankoff & David Hein
Director:Christopher Ashley
Musical Staging:Kelly Devine
Musical Arrangements:Ian Eisendrath
Scenic Designer:Beowulf Boritt
Lighting Designer:Howell Binkley
Orchestrations:August Eriksmoen
Associate Director:Daniel Goldstein
Associate Musical Staging:Jane Bunting
Associate Lighting Designer:Ryan O’Gara
Keyboard Program:Strange Cranium
◆スタッフ
翻訳:常田景子
訳詞:高橋亜子
音楽監督:甲斐正人
美術補:石原 敬(BLANk R&D)
照明補:日下靖順
音響:山本浩一
衣裳:阿部朱美
ヘアメイク:鎌田直樹
演出補:田中麻衣子
振付補:青木美保
音楽監督助手/キーボードコンダクター:竹内 聡
衣裳助手:柿野 彩
ヘアメイク助手:田中順子、岩田知世
歌唱指導:やまぐちあきこ
稽古ピアノ:中野裕子
演出家通訳:寺田ゆい
振付家通訳:鈴木なお
演出助手:西 祐子
振付補アシスタント:工藤 彩
ステージマネージャー/プロダクションマネージャー:徳永泰子(Corte)
テクニカルディレクター:清水重光(合同会社ACTIVE)
主催・企画制作:ホリプロ
後援:カナダ大使館
最終更新日 2024年3月29日