2023年上演

【2023年】官能的なジャスミンの風!『バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊』

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この作品には、エジプト・イスラエルの和平とか、異文化との出会いとか、そういうテーマもあると思うのだけれど、私的にはとりわけ、ひたすら生々しくて官能的!という印象を持った。

休憩なしのミュージカル作品であることも、珍しい。

観劇メモ

会場や観劇をした日など。

演目名

『バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊』

会場

日生劇場

観劇日

2023/2/11(Sat) ソワレ
2023/2/22(Wed) ソワレ

「いま」の濱田めぐみだからこそ

ただれそうに熟れた女・・・「いま」の濱田めぐみだからできた役だなぁ、と思った。

退屈な無名の土地で、半分死んだ目をして生きる女を、なまなましく演じる必要があるのが、このディナという役。

「ジャスミンの風」と歌うあげるナンバーは、音色も彼女の声色も、とにかく官能的で素晴らしかった。

ディナのナンバーは、「ドリームガールズ」の各種ナンバーのように、歌声でガツン!と殴られる感じはしない、むしろ、じわじわとやられる、という感じだ。

また、濱田めぐみ、とにかくスタイルがいい。

ジーパン姿も、ノースリーブのドレス姿も、とにかくエロかっこいい。

一般的に、標準よりかなり細目に絞っている女優が多いが、彼女の場合は、適度に脂肪を残しているので、より生々しい女の情欲みたいなものも見えやすかった。

ちなみに、今回この作品のすべてのキャストがシングルキャストだったが、このディナの役を他の女優がやるとしたら誰にはまるか?をあえて想像してみた。

安蘭けいとか、新妻聖子とかかな・・・・?

ちょっと若いけど大塚千弘なんかもいいかも、と個人的には思う。

音楽隊員たち

この作品では、エジプトの音楽隊がイスラエルを訪れるという設定。

舞台進行上で、この音楽隊が随所で演奏するのだが、指揮者トゥフィークの風間杜夫、トランペット奏者カーレドの新納慎也、クラリネット奏者シモンの中平良夫、以上3名は「役者」、それ以外はプロのミュージシャン。

中平良夫は、クラリネット演奏を特技にもつ「役者」のようだ。

つまり、この3名以外は演技のプロではないのだが、またそれが味わいがあってよかった。

特にバイオリン奏者カマール役の太田惠資は、とぼけた演技に味わいがあったので「ん?この方は役者?」と思い、後でプロフィールを確認したぐらいだ。

メインは、バイオリン奏者だが、パフォーマンス・アーティストとしての顔もあり、マルチな方のようだ。

この音楽隊は、ストーリーの展開に合わせて舞台の隅で演奏し、物語を盛り上げていく。

オーケストラピットのオーケストラではない、こういう音楽の挿し込み方も贅沢でいいなぁ、と思った。

電車男ならぬ「電話男」

ひたすら彼女からの電話を待ち続ける「電話男」にこがけん。

歌わない役なのかと思いきや、最後の最後で、舞台を締めくくるようなナンバーを朗々と歌い上げる非常においしい役どころだ。

実は、私、この方が吉本興業のコメディアンとは存じ上げておらず、「初めて見る役者だけれど、どんな経歴の方なのかな?」と検索してみて、びっくりした。

最近のお笑い芸人は歌も歌えるんだ。

ミュージカル俳優かと思ったよ。

たった一晩に起こる些細だけれどたくさんのドラマ

エジプトから音楽隊が町に迷い込んできて、バスがなくなったから、町のいくつかの家に分散して音楽隊員たちを泊める。

・・・・ただ、それだけの話。

優しそうだけど甲斐性なしのダメ男(矢崎 広)に、始終不機嫌な妻(エリアンナ)と、空気読んでひたすら場を取り持つ父(岸 祐二)が繰り広げる、どうでもいいけど、ちょっと胸を刺されるやりとり。

エリアンナの演技がすごくいい、実はちょっと感情移入して、ホロっと泣いてしまったぐらい。

また、ディナのセックスフレンド(渡辺大輔)とディナの険悪なバトルがあったり、女の子が苦手な少年(永田崇人)がカーレド(新納慎也)のアドバイスで、女の子とデートできるようになったりするのも、やっぱりどうでもいいけれど、「他人事」として見ていると結構面白い。

ちなみに、少年の友人(?)として出てくる、イケイケ男子を演じた青柳塁斗が、吉野圭吾を若くしたようなルックスなのと、はじけてる演技が印象に残った。

この作品はミュージカルとしては上演時間が短い作品なので、ミュージカルナンバーも限られており、渡辺大輔のソロが数小節しかなかったのは「えーー!?なんで?」と残念に思ったし、エリアンナに至っては歌ってなかったのも、残念。

唯一残念な点は、「歌える演者が歌うシーンがない、あるいは少なかった」ことかな。

さて、一晩に起こった出来事の振り返りを続けよう・・・・熟れた身を持て余したディナが、トゥフィーク(風間杜夫)を誘うが、彼はやんわりとかわす、このシーンは、じわじわと味わい深かった。

大人だから、先のことが見えすぎるくらい見えている。

ここで引くのも大人の分別、といったところか?

また、このシーンの風間杜夫の声がいい。

ミュージカルナンバーというよりは「鼻歌」みたいな歌を歌うのだが、風間杜夫って歌えるんだ、知らなかった、という新しい発見があったりした。

新納慎也のカーレドは、最初はただのチャラ男か?と思ったら、徐々に心のひだをのぞかせてくる憎い奴だったのも、嬉しい。

トゥフィークにかわされてどうにも止まらなくなっているディナを、さらっていくのがカーレド。

翌朝の別れのシーンで、カーレドは少年におどけた笑顔を見せて手を振るが、ディナのことはあまり見ていなかったように思う。

気まずい朝の空気が一瞬流れる。

それでもディナは満足そうな顔で見送っていた。

一晩で親密になっても、もうたぶん二度と会うこともない関係。

でも、それはそれで良いのかもしれない。

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姉本トモコ(@tomoko1572) 東京都出身の舞台芸術愛好家。 高校時代(1980年代!)から、セーラ服のまま劇場に出入りする青春時代を送る。 好きな場所は日比谷界隈、一番好きな劇場は帝国劇場。 ...

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作品情報

キャストなど

キャスト

風間杜夫:トゥフィーク(指揮者)
濱田めぐみ:ディナ

新納慎也:カーレド(トランペット)
矢崎 広:イツィック
渡辺大輔:サミー

永田崇人:パピ
エリアンナ:イリス
青柳塁斗:ツェルゲル

中平良夫:シモン(クラリネット)
こがけん:電話男
岸 祐二:アヴラム

辰巳智秋:警備員
山﨑 薫:ジュリア
髙田実那 :アナ
友部柚里:サミーの妻
太田惠資:カマール(バイオリン)
梅津和時:警察音楽隊(マルチリード)
星 衛:警察音楽隊(チェロ)
常味裕司:警察音楽隊(ウード)
立岩潤三:警察音楽隊(ダルブッカ)

竹内大樹(スウィング)
若泉亮(スウィング)

演出・音楽・振付等

原作:エラン・コリリンによる映画脚本
音楽・作詞:デヴィッド・ヤズベック
台本:イタマール・モーゼス
翻訳:常田景子
訳詞:高橋亜子
演出:森 新太郎

音楽監督:阿部海太郎
美術:堀尾幸男
照明:佐藤 啓
音響:井上正弘 けんのき敦
衣裳:西原梨恵
ヘアメイク:鎌田直樹
振付:新海絵理子
歌唱指導:石川早苗
稽古ピアノ:安藤菜々子
演出助手:伴・眞里子 玉置千砂子
舞台監督:小笠原幹夫

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