2024年上演

【2024年】救いのなさが救い『メディア/イアソン』

https://lasfloresrojas.com

井上芳雄は定期的に、”非ミュージカル”に出演している。

そういうわけで、今回もこちらの作品をみることになった。

ちなみに、「ミュージカル界のプリンス」と言われた井上芳雄が、定期的に”非ミュージカル”に出演しているのは、どんな戦略なんだろうか?

役者としての幅を広げるため?

ストレートプレイへ、新たな観客を誘導するためのマーケティング戦略?

・・・などなど気になるのだが、いち観客である私には知りようがない。

よって、純粋に芝居を楽しんできた。

観劇メモ

会場や観劇をした日など。

演目名

『メディア/イアソン』

会場

世田谷パブリックシアター

観劇日

2024/3/24(Sun)マチネ

メディアとは一言で語れない女

ギリシャ悲劇はたくさん見ているわけではないが、芝居や舞踏などで、王女メディアは何回か見ている。

演じる女優(平幹二朗という「男性の俳優」が演じたのも見たことがある)によって、あるいは演出家によって、だいぶ印象が変わってしまう、かなり振り幅の大きいキャラクターだと思う。

いろんな論客が、このメディアという女性の心理を分析し、言語化しているなかで、私ごときがあえて解釈をつけるのも意味がないので、それはしないでおく。単純に今回の舞台を見た感想だけ述べようと思う。

今回みたメディアは、南沢奈央が演じた。

私には、このメディアは、怒りに狂いながらも、どこか冷静で、かつ慈愛に満ちた女性に見えた。

そう、怒っているけれど、「この状況なら、私、怒るしかないでしょ」という感じで、自分の置かれた立場を客観視したうえで、冷静に怒っているように見えるのである。

そして、子供を殺すのも「この状況なら、子供を殺すしかないじゃん」と、あらゆる選択肢の中から、冷静に最適解(最適なのかわからないが)を選んだ結果が、子殺しだった、という雰囲気。

なんというか、理知的で大胆な外科医、みたいな雰囲気だろうか?

ドロドロした情念や嫉妬、そんなものを全く感じなかったメディアだった。

しなやかで美しい三浦宏規

メディアの子供(長男?)や、メディアの弟アプシュルトス、そして、炎の舞を演じた三浦宏規がとにかく美しかった。

炎の舞はいうまでもなく、そっと立っているだけでも洗練された美しさを感じられた。

それと、目力が印象に残った。

私が観劇した日、2024/3/24は、彼の25回目の誕生日だったらしく、カーテンコールでは井上芳雄に肩をポンポンとたたかれてはにかむ姿もあった。

その他

世田谷パブリックシアター内には、ギリシャ悲劇の過去の舞台のポスターが展示されていた。

懐かしい作品も!

トロイアの女たち、これが上演されたのは2012年暮れだったんだ!
もう11年以上が経過していたとは!!

私が書いています
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姉本トモコ(@tomoko1572) 東京都出身の舞台芸術愛好家。 高校時代(1980年代!)から、セーラ服のまま劇場に出入りする青春時代を送る。 好きな場所は日比谷界隈、一番好きな劇場は帝国劇場。 ...

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作品情報

キャストなど

キャスト

井上芳雄 南沢奈央 三浦宏規 水野貴以 加茂智里

演出・音楽・振付等

【原作】「アルゴナウティカ アルゴ船物語」作:アポロニオス 翻訳:岡道男
「メデイア」作:エウリピデス 翻訳:中村善也
【脚本】フジノサツコ
【演出】森新太郎

【美術】伊藤雅子
【照明】佐々木真喜子
【音楽】ダニー・フォード
【音楽監督】落合崇史
【音響】けんのき敦
【衣裳】西原梨恵
【ヘアメイク】大和田一美
【振付】田井中智子
【演出補】石田恭子
【演出助手】櫻井裕代
【舞台監督】瀨﨑将孝

【宣伝美術】秋澤一彰
【宣伝写真】山崎伸康
【宣伝スタイリスト】西原梨恵
【宣伝衣裳提供】ヨーガンレール
【宣伝ヘアメイク】大和田一美

【世田谷パブリックシアター芸術監督】白井晃

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