12年ぶりの再演。
プリンシパルキャストも「大半」が12年前からの続投ということで、新鮮でありつつ懐かしい公演となった。
プリンシパルで変更があったのは、ルーシーの潤 花、マダム・ドファルジュの未来優希、ドクター・マネットの福井晶一のみ。
なかなかの続投率である。
なお、今回は5回の観劇。
プリンシパルキャストはすべてシングルキャスト。(珍しい?!)
Contents
観劇メモ
会場や観劇をした日など。
演目名
『二都物語』
会場
明治座
観劇日
2025/5/8(Thr)ソワレ
2025/5/18(Sun)マチネ
2025/5/21(Wed)マチネ
2025/5/24(Sat)ソワレ
2025/5/26(Mon)ソワレ
絶妙なタイミングで心をかき鳴らす音楽
やっぱり、楽曲がいいな、というのが今回改めて感じた印象。
とくにシドニーの心の動き(特にショック)に合わせて、音楽がガツーン!と揺さぶりをかけてくれるので、それが何とも言えない。
特に2つのシーン。
まず、クリスマスの日、シドニーがルーシーに振られるシーン。ここでは、道化のようにおどけるシドニーに、ルーシーが申し訳なさそうに「シドニー。。。」と声をかけるのだが、そこでガツンと音楽がシドニーの心の空洞を表現していく。その時のシドニーの後ろ姿も、切ない。
次に、パリでチャールズがとらわれた後の銀行の中のシーン。悪夢にうなされて「行かないで!」とうわ言をいうルーシー。シドニーがルーシーを守ろうと傍に駆け寄ると、次にルーシーが発した言葉は、「チャールズ!」であった。その時のメロディ、それとシドニーの驚きと落胆の混じった表情がとてつもなく悲しい。
大いなる快感?
実は、私はディケンズの小説は読んでいない。なので、ミュージカルでしかこの作品を知らない。
シドニーはたった24時間の間に、自分の人生の進退を決めてしまっている。たったの24時間の間に、どれだけの心の動きや思考の動きがあったのだろう?
前回2013年の時にも思ったのだが、井上芳雄のシドニーには、自分が犠牲になることで愛する人(たち)が幸せになるという、大いなる快感を感じているような、そんな気配を感じる。
とにかく満足、これ以上の解はない、みたいな、そんな感じ。
そう思いつつ、この部分だけ見ると美しい、けれど、実際、革命の処刑なんて、汚くて臭くて怖いだろうな、とも思った。さすがにミュージカル作品では、そこまでグロテスクなものは見えないけれど、シドニーが実在の人物だったら、どんなにグロテスクなものを目にしたことだろう。
いや、それとも、高邁な精神の前にしては、グロテスクな現実も見えなくなるのだろうか。
演者たち
今回12年ぶりの再演だが、奇跡の再演だと思っている。
なぜならば、次に再演されるときには、シドニーとチャールズは井上芳雄と浦井健治ではないと思うからだ。まさに奇跡の再演。
一幕冒頭はドクターマネットの回想から始まる。今回のドクターマネットは福井晶一だ。
初老のドクターとして何の違和感もなく見ていたのだが、あとでWikiで調べていて「あ!」と驚いた。彼はまだ51歳なのだ。なんという貫禄。
テヴレモンド侯爵の登場の仕方は、前回の演出と同じなのだろうか?ちょっと前回の登場の仕方を覚えていないのだが、今回は、逃げ惑う娘(あとから思うにこの女性は、お針子役の女優と同じ女優が演じているので、テヴレモンド侯爵の屋敷で働くお針子という設定なのだろう)を捕まえて、スカートの中に顔を突っ込んでいる、という衝撃のシーンが、テヴレモンド侯爵の登場のシーンだ。
少しショッキングなシーンである。
岡幸二郎のテヴレモンドは、前回よりさらに傲慢さがパワーアップしており、かなり怖い感じがした。
そして、颯爽と舞台に登場してきたチャールズ・ダーニーには、ハッ!とさせられた。浦井健治が二回りぐらいほっそりとして若返っている!
役に合わせて外見も変える役者ってすごい。
私は、浦井健治の歌唱力は決して高くはないと思っているのだが、やっぱり少しどこか陰りのある独特の声色には、とても魅力があると感じた。
今回初見となったのが、ルーシー役の潤 花。
華があってチャーミングなルーシーだ。
歌唱には若干不安定さを感じたけれど、純粋で善意の美しい女性、という役柄には説得力があった。
また、特に印象に残っているのが、チャールズに求愛されるシーン。
このシーンでは、ルーシーのはちきれんばかりのエロスが、感じられた。
そのほか、プリンシパルには見どころが多かった。例えば、悪党なのかと思いきや、人間らしい優しさみたいなものをチラチラと小出しにしてくる福井貴一のバーサッド、寡黙なのに異様な存在感を放つジェリー・クランチャーの宮川 浩、セリフとミュージカルナンバーが多くない分、細かい演技でテレーズへの溢れる愛を語るドファルジュの橋本さとし、いずれも素晴らしかった。
ちなみに、今回のプリンシパルで唯一、マダム・ドファルジュの未来優希だけ、若干違和感を感じた。
・・・とはいえ、歌唱も演技も素晴らしい。
しかし、マダム・ドファルジュは、子供のころに受けた傷を引きずった痛々しい女であるはずだ、と思うのだ。その点、未来優希のマダム・ドファルジュは、迫力のある女ボスみたいに見えちゃったんだよなぁ。
ルーシーと子供を襲撃しようとしたシーンでは、ミス・プロスと揉みあいになった末、自分が持ってきた銃で息絶えるのだが、未来優希のマダム・ドファルジュのほうが華奢な塩田朋子のミス・プロスより体格がいいので、一瞬、マダム・ドファルジュがミス・プロスをやってしまったようにみえるのである。マダム・ドファルジュって貧乏で痛々しい感じにやせ細っているはずでは?それとも、ドファルジュのワイン酒場が繁盛して食うものには困ってなかったってことなのかなぁ?
アンサンブルでは、お針子役の北川理恵が印象に残った。可愛らしくて透き通った声。
ガスパール役の丸山泰右の、侯爵暗殺シーンにおける忍者のような足さばきも見事。
侯爵に殺害される平民の少年役の荒田至法の、けなげで可哀そうすぎる薄幸の少年も、胸に刺さった。
子役では、若杉葉奈の美少女ぶりと、ふざけた時のギャップに驚かされた。『モーツァルト』のアマデ役の時から、すごい美少女だな、と注目をしていたのだが、また少し大きくなって、美少女ぶりが増していた。
2025.5.24(Sat)ソワレ、おけぴ・ぴあ合同貸切回のカーテンコール
カーテンコールでは、井上芳雄が、当作品における「イケおじ」出演について言及しており、「ここにいないのは石川禅さんぐらい」と言った後、「あ、あと今拓哉さんも」とつづけ、さらに「もっともっと他にもたくさんいますね」と付け足したのがおかしかった。
また、井上芳雄は、観客からの熱量みたいなものも伝わってきて感慨深い、というような趣旨の発言をしたときに、この作品はキンキーブーツのように客席が盛り上がってヒューヒュー言うような作品ではないのだけれど、ということも言っていた。
明治座という劇場についてアレコレ
今回は、一階正面の最前列、一階正面の中間列、二階正面最前列、三階正面最前列と、いろんなヴァリエーションの席を体験した。

1階席最前列で見た時のチケット(この演目では5列が最前列だった)
『屋根の上のヴァイオリン弾き』や『1789』で、たとえ一階正面であっても端の席からは、見えにくいというのは、すでに体験済みだった。
今回、三階正面最前列についてはまいった!
小柄で座高が高くない私にとっては、手すりのせいで、いわゆる「舞台端(ぶたいばな)」と呼ばれる、舞台の一番客席に近いところが、完全に隠れるのだ!
これには参った。
三階席ならば、二列目のほうが「まし」であろう。(※三階席は二列目までしかない)
また、明治座は、座席の幅が非常に狭いように感じるのは気のせいだろうか?
私は身長156cm体重50kgのいたって普通の体型だが、オペラグラスをバッグから取り出そうとしたときに、隣の席のご婦人(かなり華奢な感じの人)の腕に私の腕がぶつかった。
隣のご婦人はたいそう神経質な方のようで、当たった腕をもう片方の腕でおおげさにかばって、さらに大げさに身を引く反応を見せていたが、面倒くさいので無視した。
普通体形の私とかなり華奢なご婦人が、隣同士に座っていて、ありきたりのなんでもない動作をしてぶつかるのだから、ふくよかな体形の人が隣同士に座ったら、かなり触れる回数が増えるんじゃないだろうか???
キャストボードなど

2025/5/8(Thr)ソワレ

2025/5/18(Sun)マチネ

2025/5/21(Wed)マチネ

2025/5/24(Sat)ソワレ

2025/5/26(Mon)ソワレ
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運営者情報
姉本トモコ(@tomoko1572) 東京都出身の舞台芸術愛好家。 高校時代(1980年代!)から、セーラ服のまま劇場に出入りする青春時代を送る。 好きな場所は日比谷界隈、一番好きな劇場は帝国劇場。 ...
続きを見る
作品情報
キャストなど
キャスト
シドニー・カートン:井上芳雄
チャールズ・ダーニー:浦井健治
ルーシー・マネット:潤 花
マダム・ドファルジュ:未来優希
サン・テヴレモンド侯爵:岡 幸二郎
バーサッド:福井貴一
ジェリー・クランチャー:宮川 浩
ドファルジュ:橋本さとし
ドクター・マネット:福井晶一
ジャービス・ロリー:原 康義
ミス・プロス:塩田朋子
弁護士ストライバー:原 慎一郎
アンサンブル
荒田至法/榎本成志/奥山 寛/河野顕斗/後藤晋彦/砂塚健斗
田中秀哉/常住富大/福永悠二/丸山泰右/山名孝幸/横沢健司
彩花まり/石原絵理/岩﨑亜希子/音道あいり/樺島麻美
北川理恵/島田 彩/原 広実/玲実くれあ
子役
大村つばき/齋藤菜夏/高木 郁/若杉葉奈
張 浩一/松坂岳樹
演出・音楽・振付等
脚本・作詞・作曲:ジル・サントリエロ
追加音楽:フランク・ワイルドホーン
原作:チャールズ・ディケンズ
(「オリバー・ツイスト」「クリスマス・キャロル」)
翻訳・演出:鵜山 仁
訳詞:佐藤万里
音楽監督:八幡 茂
音楽監督補:宇賀神典子
歌唱指導:やまぐちあきこ・安部誠司
ステージング:田井中智子
美術:松井るみ
照明:服部 基
衣裳:前田文子
ヘアメイク:富岡克之(スタジオAD)
音響:渡邉邦男
音響補:碓氷健司
映像:栗山聡之
アクション:渥美 博
指揮:若林裕治
オーケストラ:東宝ミュージック・ダットミュージック
稽古ピアノ:國井雅美・石川花蓮・小川浩佳
舞台監督:廣田 進
演出助手:末永陽一
制作:いとうちえ・藤田千賀子
アシスタントプロデューサー:渡邊 隆
スーパーヴァイザー:岡本義次
プロデューサー:田中利尚
最終更新日 2025年5月31日