映画・映像

鑑賞後だれかに優しくしたくなる『パリタクシー』

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最初から「こんな展開だろうな」という期待を裏切られなかった作品。

・・・とはいえ、予想以上のドラマが含まれていた、ということも確か。

鑑賞後は、誰かに優しくしたくなるような、そんな作品だった。

静かにじわじわと、ほっこりした気分になりたいときに、おすすめできる映画。

ひとりで見るのもいいし、大切な人と一緒に見るのもよさそう。

作品メモ

作品のプロファイル

邦題

パリタクシー

原題

Une belle course/Driving Madeleine

制作年

2022

制作国

フランス

監督

クリスチャン・カリオン

主な出演者

リーヌ・ルノー/ダニー・ブーン/アリス・イザーズ/ジェレミー・ラユルト/ジュリー・デラルム

エレガントで粋な雰囲気の中に想定外の・・・

エレンガントで上品な老婦人が、タクシーに乗り込んで、介護施設に行く・・・

ただ、それだけのストーリー。

「ちょっと寄り道をしてちょうだい」という、老婦人の可愛らしいお願いに、しぶしぶ応じるタクシー運転手。

冒頭の数分を見て、「ああ、きっと、この老婦人が、パリ中の思い出の場所に寄り道して、思い出話を語るストーリーなんだろうな」と思った。

実際、その通りの展開だったが、その老婦人の「思い出話」がとてもスパイシーで、想像以上に刺激的であった。

そりゃ、92歳も生きているのだから、いろんなことがあっただろうということは想定できた。

しかし、そうか、戦争時代を生き抜き、女性の人権が今ほど守られていない時代を生きた世代だったか。。。。

アメリカ人の軍人との間に子供をもうけ、でも彼は国へ帰郷してしまい、その後結婚した男からはDV。

しかし、DVを受けても、相談する場所もない・・・・

DV夫から逃げるためにマドレーヌ(老婦人)が選んだ手段は、夫の男性器をガスバナーで焼くこと!!!

阿部定か?!

と思ったが、完全に違う。

マドレーヌは「愛してもいない相手は殺せない」というのだ。

夫の男性器を焼いたのは「男性としての機能を奪うため」とのこと。

実はこのシーンが一番衝撃的で、DV夫の悲鳴が印象的だ。

マドレーヌが刑務所から出てきて、ようやく最愛の息子と暮らせると思いきや、息子は受刑者の子供としてつらい日々にうんざりし、国を出ていってしまう。。。

そして、外国で若くして死んでしまう。

その後、女性解放運動の活動家として、生きてきた、というのが、彼女のざっくりとしたストーリーだ。

波乱万丈すぎる!想定以上だった!

自分の死を予感していたのか?マドレーヌのセリフで、「人生のいろんな出来事は、すべて一瞬のことのように思える」(※うろおぼえ)といった趣旨のセリフがあった。

実際、そうかもしれないな。。。。

魅力的な老婦人に徐々に心を開いていくタクシー運転手

ダニー・ブーン演じるタクシー運転手は、人間関係や金銭に、何かしらのトラブルを抱えている、ということが冒頭の描写でわかる。

ただ、タクシー運転手の細かな事情は最後まで語られない。

彼の始終不機嫌そうな顔と、時折、街中の人に激高する姿からは、おおよそ「幸せ」という言葉は似つかない。

たまたま乗せることになったこの老婦人に対しても、当初は、いかにも面倒くさそうに対応している。

おしゃべりな老婦人に、こころなしかうんざりしたような表情を見せつつも、客だからとしぶしぶ礼儀正しい応答するタクシー運転手。

ところがどうだろう、このおしゃべりな老婦人に、徐々に心を開いていく過程は、とても素敵だった。

この映画のポスターになっている、ダニー・ブーンの笑顔は、ちょうど氷のような心が氷解した時の笑顔だ。

フランス映画のここが好き!

最新のテクノロジーを使った映画も素晴らしいが、そうしたテクノロジーの使用は控えめにして、あくまでも「人」を丁寧に描いていくのが、フランス映画の特徴かな、と思っている。

そういう意味では、この『パリタクシー』も例外ではなく、登場人物の心の動きを丁寧に丁寧に見せてくれる映画なのではないか、という印象を持った。

ラストはほんのり寂しいのだけれど、家族や恋人に優しくしたい、いますぐにでもそうしなくちゃ、と思わされる、そんなリリカルな映画だった。

どこで見れる?

【U-NEXT】パリタクシー
※本ページの情報は2024年10月時点のものです。 最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。
【HULU】パリタクシー
※本ページの情報は2024年10月時点のものです。 最新の配信状況はHULUサイトにてご確認ください。
【WOWOWオンデマンド】
※本ページの情報は2024年10月時点のものです。 最新の配信状況はWOWOWオンデマンドサイトにてご確認ください。
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姉本トモコ(@tomoko1572) 東京都出身の舞台芸術愛好家。 高校時代(1980年代!)から、セーラ服のまま劇場に出入りする青春時代を送る。 好きな場所は日比谷界隈、一番好きな劇場は帝国劇場。 ...

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最終更新日 2024年10月2日

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