大好きな作品。
2019年から7年ぶりの再演。
Contents
観劇メモ
会場や観劇をした日など。
演目名
『レベッカ』
会場
シアタークリエ
観劇日
2026/5/8(Fri)ソワレ
2026/5/19(Tue)マチネ
2026/6/6(Sat)ソワレ
2026/6/22(Mon)ソワレ
2026/6/27(Sat)ソワレ
新演出への戸惑い
今回は新演出版、ということでかなり戸惑いがあったのは事実。
大幅に変わった点も多く、特に、ダンヴァースのナンバーにコーラスが多く入るようになっていた点は、個人的には残念。
コーラスはコーラスで美しいのだが、ダンヴァースの独白のようなソロが好きだったので、その点は、とても残念に感じられた。
また、レベッカがガンだったという事実が明らかになるシーン、ダンヴァースが「教えてくれなかったなんて裏切りよ」と歌うナンバーは新演出版からのナンバーと思われるが、個人的には、この解釈はあまり好きではない。
・・・とはいえ、クンツェ&リーヴァイ作品であり、好きな作品の一つであることは確か。
新演出も新演出でよい点もたくさんあり、My楽では、マンダレイロスになってしまったぐらいだ。
マキシムの大幅な若返り
今回一番驚いたのは、マキシム役が海宝直人になったことだろう。
キャスティングをみて、一番最初に思ったのは「いや、いくらなんでも若すぎるだろう?!」ということだった。
しかし、そんな驚きをよそに、海宝直人の卓越した歌唱力と演技力は、そんな懸念をあっさりと吹き飛ばしてくれた。
確かに若さは感じられるものの、それが逆に「重圧と秘密に押しつぶされそうな男の脆さや必死さ」として見事に昇華されていたように思う。
特に後半に向けて感情が爆発していくシーンでは、彼の持ち味であるストレートに感情をぶつける表現が遺憾なく発揮されていた。
感情をストレートに外へと放出する苦悩と悶絶の表現は、田代万里生の表現方法と通じるところもあり、若いマキシムだからこその苦悩の表現なのかな、という感じもした。
結果として、新たなマキシム像の誕生を目の当たりにできたのは嬉しい誤算だった。
・・・とはいえ、やはり作品全体のバランスを考えると、やはり、ここはアラフィフ以降の俳優を起用してほしかった、という気持ちもある。
海宝直人(2026/6時点で37歳)は、まだ青年役もこなせる年代なので、マキシム役には少し早い、という感じがする。
私がマキシム役として、今現在適任と思えたのは、井上芳雄(2026/6時点で46歳)と石丸幹二(2026/6時点で60歳)だった。
よくよく考えると、アラフィフ以降で主役級のミュージカル俳優は、思ったより少ないかもしれない。
二人の「わたし」の対比
「わたし」役では、純粋で幼さの残る豊原江理佳と、とことん田舎臭くてどこか自己肯定感の低さが目立つ朝月希和の対比が非常に興味深かった。
特に朝月希和が立ち上げた「わたし」像には、新鮮な驚きがあった。
丸まった背中や、頼りなげにひょこひょこと歩く姿は、マンダレイの使用人たちが「おいおい、新しい奥様であの人は大丈夫なのか?」と不安を隠せないのも頷けるリアルな貧相さ、卑屈さがあった。
だからこそ、ミセス・ド・ウィンターとしての自覚に目覚めた後の変貌ぶりが際立つ。
ダンヴァースに対峙し、マイセンのキューピッドの置物を自ら割る場面では、これほど強い意志を持って立ち向かう「わたし」は見たことがない、とびっくりした。
下品さと色気が同居するファヴェル
ジャック・ファヴェルを演じた石井一彰は、上流階級の気品を一切感じさせない半グレのような佇まいだったのにも驚かされた。
ファヴェルがこれほど下品であればこそ、「社交界の華と謳われたレベッカの出自は、一体どんなものだったのか」と、彼女の背景にまで疑問を抱かせる説得力があった。
それでいて、どこかセクシーで、不思議な魅力。
ちなみに、当初、キャストが発表されたときには「石井一孝」だと見間違えてしまったのだが、石井一孝のファヴェルも見てみたかった。
独自のキャラクター像を確立した ベン
吉田広大のベンも、これまでにない新たなアプローチを感じさせた。
知的な障がいを抱える人物という印象のあるベンだが、彼が演じるベンは、むしろIQが高く純粋すぎる精神を持つがゆえに、社会に適応できなかった自由人のように映る。
「ベンは何も見てない!」と、誰に求められるでもなく繰り返す姿は、かえって「本当に恐ろしいものを見てしまったのだ」という事実を客観的に観客へ印象づけていた。
千秋楽に向けて進化を遂げたヴァン・ホッパー
ヴァン・ホッパー役の生田智子は、華やかな衣装を見事に着こなす美しい佇まいで、その存在感が素晴らしかった。
初日に近い日程では歌唱にやや苦戦している印象もあったが、千秋楽が近づくにつれて舞台上での「魅せ方」が確立され、欠点を感じさせない仕上がりになっていったのも見事だった。
二人のダンヴァース夫人が魅せる「異次元の恐怖」
今回のダンヴァース夫人役は、明日海りおと霧矢大夢。どちらも圧倒的な「怖いダンヴァース」でありながら、その恐怖の質やアプローチの次元が微妙に異なっており、役者による解釈の違いを深く堪能させてくれた。
明日海りおのダンヴァースからは、彼女自身が「レベッカの化身」なのではないかと思わせるような、この世ならざる気配を感じた。
これまで見たことのないような彼女の三白眼の鋭い眼差しは、生身の人間というよりも、亡霊や呪縛そのものが形を成してマンダレイに留まっているかのような、冷徹で現実離れした凄みがある。
一方の霧矢大夢が演じるダンヴァースは、リアルにこの世を生きている人間としての生々しい「圧」が劇場全体を支配していた。執念や憎悪、そしてレベッカへの狂信的な愛が生身の肉体を通してダイレクトに伝わってくるため、迫りくる狂気としての現実的な恐怖がある。
超然とした冷たい狂気をまとう明日海と、人間としての圧倒的な熱量で追いつめる霧矢。
二人のアプローチの対比が、作品の持つサスペンスフルな魅力をさらに引き立てていた。
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運営者情報
姉本トモコ(@tomoko1572) 東京都出身の舞台芸術愛好家。 高校時代(1980年代!)から、セーラ服のまま劇場に出入りする青春時代を送る。 好きな場所は日比谷界隈、一番好きな劇場は帝国劇場。 ...
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作品情報
キャストなど
キャスト
マキシム・ド・ウィンター:海宝直人
「わたし」(Wキャスト):豊原江理佳/朝月希和
ジャック・ファヴェル:石井一彰
フランク・クロウリー:俵 和也
ベン:吉田広大
ベアトリス:彩乃かなみ
ヴァン・ホッパー夫⼈:生田智子
ダンヴァース夫⼈(Wキャスト):明日海りお/霧矢大夢
ジュリアン⼤佐:中⼭ 昇
ジャイルズ:港 幸樹
天野朋⼦
彩花まり
植⽊達也
岡崎⼤樹
奥⼭ 寛
⾦⼦桃⼦
神⼭彬⼦
吉良茉由⼦
後藤晋彦
⼩林⾵花
⽥中秀哉
⽶澤賢⼈
Swing:中嶋尚哉/渡辺七海
演出・音楽・振付等
脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
原作:ダフネ・デュ・モーリア
演出:山田和也
翻訳・訳詞:竜 真知子
演出補:末永陽一
音楽監督:甲斐正人
歌唱指導:山口正義/やまぐちあきこ
ステージング:加賀谷一肇
美術:伊藤雅子
照明:髙見和義
音響:山本浩一
衣裳:前田文子
ヘアメイク:川端恵理子(スタジオAD)
指揮:塩田明弘/宇賀神典子
オーケストラ:東宝ミュージック/ダット・ミュージック
稽古ピアノ:國井雅美/中條純子/髙木陽歌
舞台監督:佐藤 博
演出助手:永井 誠
制作:廣木由美
制作助手:権藤 凜/中宮智彩
プロデューサー:服部優希/橋本 薫
オリジナル・プロダクション:ウィーン劇場協会
製作:東宝
最終更新日 2026年7月5日
