私は『ジェーン・エア』を読んだことがない。
映画でだけ知っている。
そういう状態で本作品を見た。
なお、今回の観劇数は3回。
役替りダブルキャストは、上白石ジェーン×屋比久ヘレン、屋比久ジェーン×上白石ヘレンの両方を観劇。
ちなみにヤングジェーンは岡田悠李/萩沢結夢/三木美怜のトリプルキャストだったのだが、たまたま三回とも岡田悠李で観劇。
Contents
観劇メモ
会場や観劇をした日など。
演目名
『ジェーン・エア』
会場
東京芸術劇場プレイハウス
観劇日
2023/3/18(Sat) ソワレ
2023/3/24(Fri) マチネ
2023/3/27(Mon) ソワレ
あえてロチェスターの物語としてみてみる
『ジェーン・エア』は、女性の自立といったテーマで語られることが多いような気がしたので、あえてロチェスターの物語として見てみることにした。
今回はロチェスターは井上芳雄のシングルキャスト。
政略結婚というか、お金のために結婚させられて苦しむのは女性だけに限らないんだよな、ということを改めて思わされた。
井上芳雄のロチェスターは、暗くて少しひねくれているけれど、ぎりぎりのところで尊厳を失わずに耐えているようなロチェスターだった。
人生にものすごく絶望しているのだけれど、ジェーンに救いを求めるのが、この上もなく可憐でいじらしい。
今回2人のジェーンが、いずれも、若くて小娘なのにとても頼りがいのある芯の強い女性を見事に演じ切っているので、なおさら、ロチェスターが可憐にみえるのだ。
夕暮れの風に向かって、「ジェ~ン、ジェ~ン、ジェ~~~~~ン♪」と歌うロチェスターの歌声は、今すぐそちらに向かいます!とジェーンが言いたくなるのもわかるほど、哀愁に満ちていた。
ちなみに、一幕の最初のほうで、ロチェスターのセリフの中に、『黄泉の国』というワードが入るのだが、思わずニヤリとしてしまった。つい二か月前は『エリザベート』で黄泉の国の帝王トート閣下を演じていただけに、「いや、もう演目違いますよー」と突っ込みそうになった。
また、東京芸術劇場2階にあるCafe de Artsでは、「ジェーン・エア」とタイアップしたメニューがあった。
その名も「ロチェスターの孤独と愛のカタチ」である。
そんな名前を付けられたら試したくなるではないか。
ダイエット中だが、その日だけ解禁して、頂いてきた。
カカオニブがホロっと苦いパフェだった。
舞台がぴりっ!と引き締まった春風ひとみミセス・フェアファックス
春風ひとみは、ここのところ『シスター・アクト』のシスター・メアリー・ラザールスや、『プロデューサーズ』のホールド・ミー・タッチ・ミーといった、コメディエンヌで見ることが多かった。
もちろん、コメディエンヌとしての彼女も素晴らしいのだが、やはりこういう役で見たかったんだよな!と思わされた。
品があって、人間臭いミセス・フェアファックス。
映画では大女優ジュディ・ディンチが圧倒的な存在感を持って演じていたが、春風ひとみのミセス・フェアファックスもそれに劣らず。
私の中では、『アンナ・カレーニナ』のベッツィと同じぐらい、このミセス・フェアファックス役はよかった。
この役は、彼女の当たり役の一つになったことだろう。
自立した女ジェーン
今回は、ジェーンとヘレン役は、上白石萌音と屋比久知奈が交代で演じたが、個人的には屋比久知奈のジェーンのほうがしっくり来たかな、という感じ。
もちろん、上白石萌音もすごくよかったのだが、なにせ全部赦しちゃう天使のようなヘレンのインパクトのほうがすごすぎたのだ。
観劇後も数日間、「赦~すのぉ~♪」という萌音ヘレンの歌声が、脳内で無限リピートされていたぐらいだ。
いや、普通の人間にとって、相手を赦すのなんて簡単じゃないから!と脳内で突っ込みを入れつつ。。。。
屋比久知奈のジェーンは、小娘なのにあまり物事に動じず、感情の波に飲まれて泣き叫んでいるときでさえ、どこかもう一人の自分が冷静に自分を見つめているようなそんなジェーンだった。
舞台美術について
今回舞台上の上手と下手に、それぞれ観客が座る「オンステージシート」なるものが設けられていた。
なるほど、観客も舞台美術の一つになるということ、セリフを言わないコロスとしての役割を果たすということなのだろう。(そもそもセリフを言わずにコロスたりえるかはわからないが)
このオンステージシートに座る観客は黒い洋服を着ることが義務付けられている、ということだったので、「服装まで気を使わなきゃいけないのは面倒だ!」と、私は最初から申し込みをしていなかった。
あとから、このオンステージシートに座った人から感想を聞いたが、この席から見えるのは、役者さんの背中ばかりで、ほぼ全シーンが「見づらい」とのこと。
ただ、メリットは、役者の細かい息遣いなどを近くで感じられること、だそうである。
一度ぐらいは、このシートに座ってみたかったな、という気がした。
そのほかたくさんのみどころ
狂った妻はだれがやるのだろう?と思っていたら、樹里咲穂がその哀れな狂女に扮していた。
背が高いし、目がいっちゃってるし、笑い声は不気味で発狂すると怖い・・・
樹里咲穂は、そのほか、鞭を持って一見おっかないけれど、実のところなんか心根は良さそうな寄宿学校のオールドミス(?)教師と、ロチェスター家ではどんくさい知能が足りなそうな家政婦も演じていて、いろんなギャップが面白かった。
そして、イギリスの上流階級のご婦人にこういう人いそうだよね!?と唸り声をあげそうになったのが、春野寿美礼。
面長で青白いぐらいの肌、薄そうな皮膚、目の色も髪の色も淡い、そして傲慢なふるまい、身のこなし・・・・なんか映画で見たことのある、イギリスの上流階級のご婦人に見間違うぐらい日本人離れしていた。
彼女はここ数年で、だいぶ容姿が変わった気がする。
また、映画ではそれほど意地悪に描かれていなかったイングラム嬢は、仙名彩世が、計算高い意地悪な上流階級の女として演じていた。
ソーンフィールドの美しい景色を見ながら、「このお屋敷、おいくらかしら?」と歌い上げるイングラム嬢は、エレガンスの仮面をかぶった下種女である。
ジェーンに対しても、公衆の面前で嫌味を言うわ、話しかけられたら「きやすく話しかけるな」とばかり冷たい対応。
これでもか、これでもか!というぐらい意地悪なイングラム嬢であった。
屋敷の召使いロバートには、萬谷法英。
この人が舞台上に出てくると、ついつい見てしまう。
いろんな顔芸とかやっていて面白いから。
ロチェスターがジプシー女の変装を解いてたねあかしをした後に、ロバートがロチェスターに向かってガッツポーズするシーンが、一番ツボった。
今回は神田恭兵のソロがなかったのは、個人的にちょっと寂しかった。
耳に残ったソロ(?)が、ヤングジェーンをいじめるミセスリードの長男が囃子歌として歌う『ブッス、ブッス、ドブス、おかちめーんこ♪』だった。
もちろん、これはミュージカルナンバーではない。
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姉本トモコ(@tomoko1572) 東京都出身の舞台芸術愛好家。 高校時代(1980年代!)から、セーラ服のまま劇場に出入りする青春時代を送る。 好きな場所は日比谷界隈、一番好きな劇場は帝国劇場。 ...
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作品情報
キャストなど
キャスト
ジェーン・エア(役替わりダブルキャスト):上白石萌音/屋比久知奈
ヘレン・バーンズ(役替わりダブルキャスト):屋比久知奈/上白石萌音
エドワード・フェアファックス・ロチェスター:井上芳雄
春野寿美礼
仙名彩世
樹里咲穂
折井理子
水野貴以
中井智彦
萬谷法英
神田恭兵
江崎里紗(スウィング)
犬飼直紀(スウィング)
子役(トリプルキャスト):岡田悠李/萩沢結夢/三木美怜
大澄賢也
春風ひとみ
演出・音楽・振付等
原作:シャーロット・ブロンテ
脚本・作詞・演出:ジョン・ケアード
作曲・作詞:ポール・ゴードン
翻訳・訳詞:今井麻緒子
音楽スーパーバイザー:ブラッド・ハーク
美術:松井るみ
照明:中川隆一
音響:湯浅典幸
衣裳:前田文子
ヘアメイク:宮内宏明
音楽監督補・ピアノコンダクター:桑原まこ
歌唱指導:柳本奈都子・中井智彦
演出助手:加藤由紀子
舞台監督:齋藤英明
企画・制作・主催:梅田芸術劇場 東宝