2026年上演

【2026年】海を越えたリスペクト。モーリー・イェストンが込めたHAIKUの魂『ISSA in Paris』

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日生劇場で幕を開けた『ISSA in Paris』。

初見時はそのぶっ飛んだストーリー展開に思考が追いつかず、正直なところ戸惑いの方が大きかった。

しかし、二度、三度と足を運ぶうちに、物語の輪郭がようやく鮮明になり、この作品の根底に流れる真摯な想いが見えてきた。

なお、Wキャスト、トリプルキャストの観劇状況は下記の通り。

ラファエル:中河内雅貴/染谷洸太をコンプリート
大町絹子:彩吹真央/藤咲みどりをコンプリート
レミー(少年):中井理人/見﨑歩誠で観劇(星駿成は見逃し)

観劇メモ

会場や観劇をした日など。

演目名

『ISSA in Paris』

会場

日生劇場

観劇日

2026/1/17(Sat)ソワレ
2026/1/22(Thr)マチネ
2026/1/27(Tue)ソワレ

アメリカ人が描く「小林一茶」――モーリー・イェストンの深い敬意

まず驚かされたのは、モーリー・イェストンが「小林一茶」をテーマに構想を練ったという事実そのものである。

舞台の端々からは、日本文化、そして「日本語」という言語そのものに対する並々ならぬリスペクトが感じられた。

特に印象的だったのが楽曲、とりわけ「Talk talk, Tokyo」だ。 なぜかバブル時代の日本を彷彿とさせる、あの独特の熱気と高揚感。懐かしさと新しさが同居するメロディは、異国の地から見た「日本」を象徴するようで、不思議と心地よい郷愁を誘った。

海宝直人の新境地と、岡宮来夢の眩しすぎる輝き

キャスト陣の対照的な魅力も、本作の大きな見どころであった。

海宝直人(海人/ISSA)の聴き手を圧倒する「カーン!」と突き抜けるような、いわゆる「海宝節」は控えめな印象。代わりに舞台にいたのは、熱く、それでいて静かに苦悩する一人の男。

海宝直人の新たな一面、その繊細な演技の機微に触れられたのは大きな収穫だ。

それと対照的に、岡宮来夢(小林一茶)は、眩いばかりの「日本男児」としての光を放っていた。近年の若手俳優の歌唱力向上には目を見張るものがあるが、彼もまたそのうちの一人と言えるだろう。

その真っ直ぐな歌声は、物語に確かな生命力を吹き込んでいた。

豊原江理佳の可憐な魅力――「女優」という役どころの真骨頂

キャスト陣の中で、もう一人強烈な光を放っていたのがテレーズ役の豊原江理佳である。

今回はフランス革命に参加する「女優」という設定であったが、そこに期待される「雄々しさ」以上に、彼女から溢れ出していたのは類まれなる「可憐さ」だ。凛とした志を持ちつつも、とにかく愛らしく、その一挙手一投足がチャーミング。

彼女の放つポジティブなエネルギーと愛くるしさは、物語に柔らかな彩りを添えており、その存在感には心底惹きつけられた。

ロマンスを捨てたからこそ輝く「友情」の物語

本作において最も興味深かったのは、登場する2組のカップル(海人とルイーズ、一茶とテレーズ)の描き方である。

ロマンスが芽生えそうで、決して芽生えない。彼らを結びつけているのは、甘い恋情ではなく、硬質な「友情」だ。

当初、モーリー・イェストンはこの2組をロマンティックな関係として描く予定だったという。

しかし、結果としてそれを排したのは英断だったのではないか。

恋愛という安易なテンプレートに頼らず、人間同士の純粋な繋がりを描いたことで、作品に独特の気高さと現代的な距離感が生まれていた。

知的な説得力。彩吹真央が体現する「学者であり母親である女性」

物語の屋台骨として、圧倒的な説得力を持っていたのが彩吹真央である。 一茶を研究する学者であり、同時に一人の母親でもあるという役どころ。

彩吹真央という役者は、こうしたインテリジェンスを感じさせる女性像を演じさせると、実に見事にハマる。彼女の持つ凛とした佇まいと知的なアプローチが、飛躍しがちなストーリーを現実に繋ぎ止める重要なアンカーとなっていた。

演出とキャストの不調和――ルイーズ役に感じた違和感

一方で、どうしても首を傾げざるを得なかった点もある。それは、ルイーズ役の潤花についてだ。 彼女が魅力的な役者であることは疑いようがないが、今作の演出と彼女の資質が噛み合っていたかは疑問が残る。

ルイーズという役が「振付家」であるならば、ダンスソロのシーンには相応の説得力が求められるはずだ。

しかし、残念ながらそのパフォーマンスには見ていて苦しさを感じる瞬間があった。ルイーズを「振付家」とするならば、舞踊の名手をキャスティングすべきだったのではないだろうか???

また、毛先だけ脱色したあの独特なヘアスタイルも、彼女本来の美しさを引き出せているとは言い難い。

リスペクトに満ちた作品であっただけに、こうしたミスマッチが目立ってしまったのは、大変惜しい。

キャストボード

2026/1/17(Sat)ソワレ

2026/1/22(Thr)マチネ

2026/1/27(Tue)ソワレ

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姉本トモコ(@tomoko1572) 東京都出身の舞台芸術愛好家。 高校時代(1980年代!)から、セーラ服のまま劇場に出入りする青春時代を送る。 好きな場所は日比谷界隈、一番好きな劇場は帝国劇場。 ...

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作品情報

キャストなど

キャスト

海人(ISSA):海宝直人
小林一茶:岡宮来夢
ルイーズ:潤花
テレーズ:豊原江理佳
ラファエル:中河内雅貴/染谷洸太(Wキャスト)
大町絹子/クニ:彩吹真央/藤咲みどり(Wキャスト)

マユ:内田未来
大町陸人:阿部裕

森山大輔
塚本直

井上真由子/岡田治己/尾関晃輔/加藤翔多郎/黒川賢也/木暮真一郎/斎藤准一郎/渋谷茉樹/島田隆誠/根岸みゆ/般若愛実/引間文香/深瀬友梨/古川隼大/武者真由/森加織/森田有希*
(五十音順)
*オンステージスウィング

中井理人/星駿成/見﨑歩誠(トリプルキャスト)

演出・音楽・振付等

原案・作詞・作曲:モーリー・イェストン
脚本・訳詞:高橋知伽江
演出:藤田俊太郎
振付:ジュリア・チェン
音楽監督・編曲・キーボードコンダクター:森亮平
美術:松井るみ
照明:勝柴次朗
音響:山本浩一
映像:O-beron inc.
衣裳:前田文子
ヘアメイク:宮内宏明
擬闘:栗原直樹
歌唱指導:YUKA、田中俊太郎
オーケストラコーディネート:新音楽協会
稽古ピアノ:中野裕子、田端俊介
通訳:伊藤美代子
振付助手:チヒロ・カワサキ
美術助手:平山正太郎
擬闘補佐:西村聡
演出助手:守屋由貴、大舘実佐子
制作:藤田早苗
制作助手:山内未央
舞台監督:倉科史典

宣伝美術:菅沼結美
カメラマン:佐々木慎一
宣伝衣裳:綾部秀美(海宝直人、潤花、豊原江理佳)橋本奈緒美(岡宮来夢)
衣裳協力:きもの円居
宣伝ヘアメイク:宮内宏明

最終更新日 2026年1月28日

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