2026年上演

【2026年】クンツェ&リーバイの魔法再び。新旧キャストが交錯する『レイディ・ベス』

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2014年の初演から、2017年の再演を経て、今回は邦題も演出も、そしてキャストも一新しての2026年公演だ。

キャストの若返りを受けて、各方面では、「若返りすぎ。前回と今回の中間の年齢層にいる実力者層を起用しないのは納得がいかない。」という意見もあったが、前回から約9年が経過しているのだから、まあ、世代交代はむべなるかな、という気持ちでキャスト発表を見ていた。

やはり、クンツェ&リーバイの世界観は素敵。

あらためて、好きな作品だと認識させられた。

好きな作品ではあるのだが、3月末までの公演期間中、私は2月までの観劇となる。

理由は3月はみたい公演がありすぎてスケジュールがいっぱいになってしまったからだ!

なお、Wキャストは以下で鑑賞。

レイディ・ベス:奥田いろは/小南満佑子 コンプリート
ロビン・ブレイク:有澤樟太郎/手島章斗 コンプリート
メアリー・チューダー:丸山 礼/有沙 瞳 コンプリート
フェリペ:内海啓貴/松島勇之介 コンプリート
ロジャー・アスカム:山口祐一郎/石川 禅 コンプリート

観劇メモ

会場や観劇をした日など。

演目名

『レイディ・ベス』

会場

日生劇場

観劇日

2026/2/11(Wed)マチネ
2026/2/14(Sat)ソワレ
2026/2/28(Sat)ソワレ

レイディを見守る二人の女性

どんなふうになるかと、全く想像もつかなかったのだが、今回の新演出およびキャスト刷新にあたり、個人的に一番インパクトがあったのが、キャット・アシュリーとアン・ブーリンだった。

この2役の共通点は、レイディを見守る存在である、ということ。
(もっとも、アンは霊界からレイディを見守っているのだが)

語彙力ゼロを承知で言うと、素晴らしかった。

キャットには吉沢梨絵。

キャットは、常に一歩引いた場所でレイディを支える控えめな存在だ。しかし同時に、作品の核ともいえる楽曲『大人になるまでに』を、深い母性で歌い上げなければならない難役でもある。

彼女の歌声は、どこまでも力強く、温かい。

意見を求められても立場をわきまえ、決して出過ぎることはない。けれど、その佇まいからはレイディを包み込む「懐の深さ」が溢れ出していた。圧倒的な歌唱力はもちろん、静かな芝居の中に宿る芯の強さに、深く脱帽した。

そして、アンには凪七瑠海。

そこには、野心と情念が静かに、しかし確かに渦巻いていた。私が心に描いていたアン・ブーリンのイメージに、これほどまで肉薄する存在に出会えるとは思わなかった。

前回の和音美桜が、高貴な気品と透き通るような歌声で「浄化された母性」を体現していたとするならば、凪七瑠海が持ち込んだのは全く別次元のアン・ブーリン像だ。

特筆すべきは、その独特の声色。

どこか陰りを帯びた、少しくぐもったような響きが、一言では言い表せない複雑な女の業(ごう)を感じさせる。その声が紡ぎ出す調べは、観る者の胸にざらりとした余韻を残し、忘れがたい女性像を舞台上に刻みつけていた。

とにかく、強烈なインパクトがあった!

瑞々しさと実力が交錯するダブルキャストの妙

主演のベスを演じた二人には、それぞれの魅力があった。

奥田いろはは、まるで小鹿のような可憐さが印象的。王族としての崇高な義務と、ひとりの女性としての幸福の間で激しく揺れ動く姿が、観る者の胸を締めつける。

対する小南満佑子は、凛とした美しさが際立つ優等生的なベスを構築。アプローチは異なるものの、両者ともに安定した歌唱力で、この大役を堂々と全勝していた。

ロビン役も、実に対照的な個性が並んだ。

有澤樟太郎は、自由を愛する森の妖精を彷彿とさせる佇まいが目を引く。ただ、冒頭の重要なナンバーで低音が響ききらなかった点は、幕開けの期待感が大きいだけに少々惜しまれる。一方の手島章斗は、どこか洗練されたシティボーイ風のロビンで、現代的な軽やかさを作品に吹き込んでいた。

期待を裏切らない、鮮烈な脇役たちの存在感

メアリー・チューダー役の二人は、いずれも期待を凌駕するパフォーマンスを見せてくれた。

有沙瞳は、まさに「こうあってほしい」という観客の願いを完璧に具現化。

そして初見で驚かされたのが、お笑い出身という経歴を持つ丸山礼だ。よく目を凝らすと確かに若さゆえの肌の艶やかさを持っているにもかかわらず、その演技力と歌唱力は驚くほど練り上げられており、年増のメアリーを違和感なく演じていた。多才な表現者としての実力に脱帽した。

フェリペ役では、内海啓貴の新たな一面に触れることができた。これまでにない色気を漂わせる彼に出会えたのは、嬉しい収穫だ。

松島勇之介は、舞台に立つだけで目を引く圧倒的な美形ぶりが光る。

カクカクとした動きや歌唱面にはまだ伸び代を感じるものの、その初々しさも含め、今後の飛躍が非常に楽しみな存在である。

今回、ガーディナー役に石川禅の名前がないことに当初は落胆していたが、新たに配された津田英佑がその穴を鮮やかに埋めてくれた。

粘りつくような嫌らしさと、強烈なインパクト。物語の悪役としての機能を十二分に果たしていた。

アスカム先生の包容力と、ルナールの配役への考察

アスカム役には、初演からの続投となる山口祐一郎に加え、石川禅がキャスティングされた。

次元を超越し、もはや何者であるかすら超越した不思議な魅力を放つ山口に対し、石川は包容力の塊のような温かな知性を感じさせる。

このベテラン二人が見せる対照的な師匠像は、本公演の大きな見どころのひとつだった。

一方で、シモン・ルナール役については、もう少し上の世代の俳優を置いても良かったのではないか、という思いも残る。

今回、同役を演じた高橋健介は、端正なルックスを活かした「イケメン枠」としてのポテンシャルのほうが高いんじゃないか、と思うからだ。

ふと振り返ると、彼は『1789』でも吉野圭吾が演じていたアルトワ侯を引き継いでいる。

吉野圭吾という強烈な個性を放つ役者の後任に、あえて若手の彼を据え続ける制作側の意図は何だろうか。そんなキャスティングの裏側に思いを馳せるのも、再演を重ねる作品ならではの楽しみかもしれない。

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姉本トモコ(@tomoko1572) 東京都出身の舞台芸術愛好家。 高校時代(1980年代!)から、セーラ服のまま劇場に出入りする青春時代を送る。 好きな場所は日比谷界隈、一番好きな劇場は帝国劇場。 ...

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キャストボード

2026/2/11(Wed)マチネ

2026/2/14(Sat)ソワレ

2026/2/28(Sat)ソワレ

作品情報

キャストなど

キャスト

レイディ・ベス(Wキャスト):奥田いろは/小南満佑子
ロビン・ブレイク(Wキャスト):有澤樟太郎/手島章斗
メアリー・チューダー(Wキャスト):丸山 礼/有沙 瞳
フェリペ(Wキャスト):内海啓貴/松島勇之介

シモン・ルナール:高橋健介
スティーブン・ガーディナー:津田英佑
キャット・アシュリー:吉沢梨絵
アン・ブーリン:凪七瑠海

ロジャー・アスカム(Wキャスト):山口祐一郎/石川 禅

粟野史浩/飯作雄太郎
須田遼太郎/加賀谷奏音/小林諒音

安部三博/飯塚萌木/伊宮理恵/大竹萌絵/風間駿太朗/黒沼 亮/相良飛鷹
澤田圭佑/柴田実奈/Taichi/寺岡拓海/畑中竜也/春乃ひめか/廣瀬孝輔
政本季美/松浪ゆの/丸山泰右/光由/宮内裕衣/山下麗奈/山田 元/山田定世

リトル・ベス(Wキャスト)
浅利香那芽/横溝陽音

リトル・メアリー(Wキャスト)
上條日菜/馬場音羽

演出・音楽・振付等

脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ

音楽・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ

演出・訳詞・修辞:小池修一郎(宝塚歌劇団)

オリジナル翻訳:薛 珠麗
翻訳:増渕裕子

音楽監督:甲斐正人
振付:桜木涼介
歌唱指導:山口正義/やまぐちあきこ

美術:二村周作
照明:笠原俊幸
映像:石田 肇
音響:山本浩一
衣裳:生澤美子
ヘアメイク:富岡克之(スタジオAD)
擬闘:栗原直樹

舞台監督:廣田 進/瀬﨑将孝
演出助手:加藤由紀子/井口綾子/汀音妃古

指揮:上垣 聡
オーケストラ:東宝ミュージック/ダット・ミュージック
音楽監督助手・稽古ピアノ:中條純子
稽古ピアノ:宇賀村直佳/小川浩佳

プロダクション・コーディネーター:小熊節子

制作:斎藤凌子
制作助手:河原華身

プロデューサー:服部優希/鳥澤勇人

協賛:三菱地所

製作:東宝

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