2025年上演

【2025年】ミュージカル愛が暴走した、知的メタ喜劇『サムシング・ロッテン!』

https://lasfloresrojas.com

ブロードウェイ作品であるということ、そして、数々のミュージカル作品が引用されているらしい、という情報のみで観劇。

まさかの腹筋崩壊。

・・・とはいえ、この作品、かなり評価が分かれそうな予感。

まったく笑っていない観客もチラホラおり、ミュージカル作品やシェイクスピアをある程度知っている観客であっても、なんだか刺さらない、という人もいそうな感じがする。

好みが真っ二つに割れそうな作品だ。

観劇メモ

会場や観劇をした日など。

演目名

『サムシング・ロッテン!』

会場

東京国際フォーラム ホールC

観劇日

2025/12/20(Sat)ソワレ
2025/12/28(Sun)マチネ

引用どれだけ?

正直全部把握するのは無理だった。

そして私にも、知らない作品もあると、あらためて認識させられた。

ちなみに、ビー(瀬奈じゅん)が、ベルサイユのばらの「心のひとオスカル(アンドレの最期)」を歌ったのだが、さすがにこれはブロードウェイ版にはないだろうないだろう。

また、デスノートのリュークが登場してきて「これは別の劇場で浦井君がやってまーす」というのも日本版のオリジナルだろう。

ダンスシーンで分かりやすかったのが、CHICAGOの羽でビリー・フリンを囲むシーン。それと薄着の男性ダンサーたちが、両手を腰の後ろで揺らしながら前進する、あのボブ・フォッシー独特の踊り!

コーラスラインのオーディションのあの有名な踊りも、わかりやすかった。

劇場へのコメントとしては、四季劇場、帝国劇場(もうない!というネタで)が言及されていたように思う。

ハムレットのオフィーリアを尼寺に行かせると、そこではシスターたちが歌って踊って(シスターアクト)しまうことになったり、ハムレットの叔父の名がスカー(ライオンキング)になっていたり、ナイジェルとポーシャの出会いのシーンはレ・ミゼラブルのマリウスとコゼットの出会いのシーンを彷彿とさせたり、話があっちこっちに飛んでいくのでついていくのが大変だ。

個人的に一番笑ったのは、ネタ切れを起こして苦しむシェイクスピアのもとに、かなり不気味なアマデ(モーツァルト)の人形が登場して、シェイクスピアが「ありのままの僕を愛してほしい」と言いながら、アマデの羽ペンで腕を刺されて悶絶するシーンだ。

こうして文字化すると全然面白くないのだが、和樹のはじけた演技に脱帽。

ほかにも、たくさんありすぎて書けないが、「団結だ、団結だ、団結永遠に・・・」とニックがつぶやくシーンは、「ビリーエリオット」だろう。ほかにも気づいてない、あるいは気づいたけれど忘れてしまった引用はたくさん!

そう、もう脳みそが追い付かない!という感じ。

アッキーの演技がシュールすぎて

ニック演じる中川晃教が、きわめて真面目な顔で、「ここにどこに朝食の要素があるんだ?オムレツはどこに行ったんだ?」とナイジェルを詰めるシーンが延々と続くのだが、腹筋崩壊しそうだった。

ナイジェルが、奇想天外なストーリーの中から、ハムレットの骨子を的確に拾い上げているにもかかわらず、オムレットに異様なこだわりを見せるニック。

シュールすぎて、理屈では分かっているのに、笑いが先に来てしまう。

中川晃教の演技がまた厄介で、こちらが「ここは冷静に見なければ」と思う隙を与えない。真顔で、論理的に、全力で間違った方向に突き進むその姿は、もはやボケとツッコミの概念を超えていて、シェイクスピアを巡る知的な会話が、いつの間にか不条理コントにすり替わっていることに気づかされる。

この場面は、『サムシング・ロッテン!』という作品が持つ性質──

演劇史や文脈を熟知しているからこそ、そこを堂々と踏み外せるという強度を、最も端的に示しているシーンだと思う。

いやはや、すごすぎる!

若いカップル

ナイジェルを演じた大東立樹が、今回、かなりいい感じに役にはまっていてホッとした。(実は、前回の『コレット』では、見せ場があまりないように思えていたのだ)

また、ポーシャ役のかわいい女の子は梅田彩佳?とも思ったのだが違った、矢吹奈子だ。私は今回初見だったが、小柄でよくとおるきれいな声で、素晴らしい演者だった。

シェイクスピアってリア充だったのか?

そういえば、シェイクスピア作品について語ることはあっても、シェイクスピアという人物について語られることはあまり多くないような気がする。

今回シェイクスピアを演じたのは、加藤和樹。

ど派手な衣装で、パリピとして出てきた。

キザってスカしても、そこはかとなくまじめさが垣間見えるのは、やはり加藤和樹だからこそ。

衣装から除く胸板や二の腕が、鍛えすぎてない感じも、絶妙にセクシーなのである。

ちなみに、私が当作品を観劇した日(2025/12/21)に、加藤和樹の結婚の報告がSNSに出た。お相手は松田未莉亜だ。なんておめでたい。

私が書いています
運営者情報

姉本トモコ(@tomoko1572) 東京都出身の舞台芸術愛好家。 高校時代(1980年代!)から、セーラ服のまま劇場に出入りする青春時代を送る。 好きな場所は日比谷界隈、一番好きな劇場は帝国劇場。 ...

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作品情報

キャストなど

キャスト

ニック:中川晃教
シェイクスピア:加藤和樹

ノストラダムス:石川 禅
ナイジェル:大東立樹
ポーシャ:矢吹奈子
ビー:瀬奈じゅん

岡田 誠/高橋卓士/横山 敬

植村理乃/岡本華奈/岡本拓也/神谷玲花/小山侑紀/坂元宏旬
髙橋莉瑚/高山裕生/茶谷健太/横山達夫/吉井乃歌/米澤賢人
小林良輔(スウィング)/七理ひなの(スウィング)

演出・音楽・振付等

作詞・作曲:ウェイン・カークパトリック、ケイリー・カークパトリック
脚本:ケイリー・カークパトリック、ジョン・オファレル
演出:福田雄一
翻訳・訳詞:福田響志

振付:上島雪夫
音楽監督・指揮:上垣 聡
美術:二村周作
照明:髙見和義
音響:山本浩一
衣裳:十川ヒロコ
ヘアメイク:宮内宏明
歌唱指導:平岡由香
タップ振付・演出補・振付補:福田響志
演出助手:荻原秋裕、加藤由紀子
振付助手:遠藤瑠美子
舞台監督:津江健太

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