1987年の映画「バグダッド・カフェ(原題:Out of Rosenheim、英題:Bagdad Cafe)」のミュージカル版で、日本初演。
映画は知らなくても、ジェヴェッタ・スティールの歌う「コーリング・ユー」は聞いたことがある人も多いはずだ。
この映画の主題歌であり、ミュージカルでも歌われる。
Contents
観劇メモ
会場や観劇をした日など。
演目名
『バグダッド・カフェ』
会場
シアタークリエ
観劇日
2025/11/3(Mon)マチネ
2025/11/15(Sat)ソワレ
孤独なふたりの出会い
ジャスミンとブレンダの出会いは、ただの偶然だったのかもしれない。けれどその偶然は、形は違えど深い孤独を抱えたふたりの女性を引き寄せた。
ブレンダには夫も子供もいる。だが、彼女の怒りや苛立ちは、誰にも届かず、誰にも受け止められていない。ジャスミンは異国の砂漠にひとりきり。言葉も文化も通じない場所で、頼れる人は誰もいない。
そんなふたりが、最初はぎこちなく、互いの存在に戸惑いながらも、少しずつ、互いの孤独に触れ、心の距離を縮めていく。それは「まとまっていく」というよりも、“ほどけていく”ような関係性だ。固く結ばれた孤独の結び目が、相手の存在によって、少しずつ緩んでいく。
掃除をするジャスミン、最初は苛立ちながらもそれを受け入れたブレンダ。言葉ではなく、行動で交わされる信頼の兆し。ふたりの間に流れる沈黙が、次第に安心へと変わっていく過程は、観客の心にも静かに染み渡る。
この出会いは、奇跡ではない。ただ、孤独な者同士が、互いの孤独を見つめ、受け入れようとする勇気の物語なのではないか。
ジャスミンに花總まり、ブレンダに森公美子、これ以上ドンピシャな配役あるか?と思うぐらい、「これだ!」という配役だった。
ルディとジャスミンの共鳴
ルディがジャスミンを描こうとする場面は、単なる肖像画ではない。ジャスミンの存在そのものを見つめてそれを形にしようとする行為。
言葉ではなく、視線と沈黙が交わされる関係性。見つめるという行為が、これほどまでに親密で、官能的であることを教えてくれるシーンだった。
小西遼生演じるルディは、寡黙なのに雄弁という不思議な魅力。
絵画のモデルとなったジャスミンが、胸元のボタンを開け、次に下着姿になって微笑むシーンがあり、そのあと暗転になるのだが、二人はきっと親密になったんだろうと観客に想像させる演出もニクイ。
その他いろいろ
ドラマティックでもないし、淡々とした日常が流れていくストーリー。でも、後からじわっとくる作品だった。
ブレンダの娘フィリスを演じたのが清水美依紗。既視感のあるヘアスタイルは「サザエさん」だ。だが、そのコミカルな印象を裏切るように、彼女の演技は繊細で、複雑な年頃の揺れを見事に体現していた。
彼女が、異邦人ジャスミンに向けるまなざしには、少女のような無垢さと、女性としての憧れが同居している。特に印象的だったのは、ジャスミンとふたりで過ごす場面。まるで子猫のように懐いている。清水美依紗の歌声は、若さのきらめきと、どこか切なさを含んだ透明感が印象的だ。
ブレンダの息子であり、赤ん坊の父親という複雑な立場にある青年を演じたのは、越永健太郎君。彼の実年齢は15歳。この少年も、設定上はそんな年齢なのかな?子供とも大人とも言えない曖昧さが、彼の役作りに絶妙な風情を与えていた。舞台上の彼は、キョドっていて、じわじわとクレイジー。オタク風で気難しそうで、どこか“行っちゃってる”ような表情を浮かべながら、音楽にだけは異様な集中力を見せる。そのギャップもすごいが、坊やのような容姿なのに、赤ん坊の父親という設定もすごい。母親とは別れたのか、そもそもどういう経緯なのかは語られない。だが、その“語られなさ”が、かえって彼の存在を際立たせる。
越永君の演技は、説明のない空白を、表情と所作で埋めていくタイプ。いろんな意味での不安定さが、むしろリアルだった。
ジャスミンとの掛け合いはほんのわずかだったが、もっと歌えるはずの彼の声を、もっと聴きたかった。
2025/11/15(Sat)ソワレはおけぴとチケットJCBの貸し切り公演
私は、チケットJCBから、センターブロックの前から2列目という超良席をいただいた。
これまでの経験上、チケットJCBではかなりの良席をいただくことが多い。
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運営者情報
姉本トモコ(@tomoko1572) 東京都出身の舞台芸術愛好家。 高校時代(1980年代!)から、セーラ服のまま劇場に出入りする青春時代を送る。 好きな場所は日比谷界隈、一番好きな劇場は帝国劇場。 ...
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作品情報
キャストなど
キャスト
ジャスミン・ムンシュテットナー:花總まり
ブレンダ:森 公美子
ルディ・コックス:小西遼生
フィリス:清水美依紗
アブドゥラー:松田 凌
サル 他:芋洗坂係長
アーニー 他:岸 祐二
ムンシュテットナー氏 他:坂元健児
デビー:太田緑ロランス
サル・ジュニア:越永健太郎
伊藤かの子/聖司朗/東間一貴/中嶋紗希/舩山智香子/堀江慎也
スウィング
齋藤信吾/齋藤千夏
演出・音楽・振付等
脚本:パーシー・アドロン/エレオノーレ・アドロン
音楽:ボブ・テルソン
歌詞:リー・ブルーワー/ボブ・テルソン/パーシー・アドロン
演出:小山ゆうな
翻訳・訳詞:高橋知伽江
音楽監督:荻野清子


